続・元ヤン人妻が夫の服役中
 まさか僕の美人妻が寝取られるなんて… ドスケベ店長種付け編
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パンドラの壺
作者:白雲
04. タイトル未設定
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【火曜日】
――アパート――
 茜色の空が次第に紫色に薄まり、逆に影は濃くなり闇へと変わっていく。
 浅倉南は路地裏の自動販売機の前に立っていた。塗装は剥げて錆び、アクリル板は割れて、中の商品サンプルは傾いている。何時、撤去されるか分からないので、もう補修もされていないのだろう。
 頭上の街灯がパチパッチと音を立てて点灯して、ゆるくカールさせた髪を淡い青い光が照らす。登った月の光も合わさって、その制服姿を複雑な濃淡で描き上げている。
「こんばんは」
「またお前か……」
 仁志は舌打ち混じりに呟く。
 紫色のニッカポッカ姿で、浅倉南の前を素通りする。そして、その隣の自動販売機でビールを買うと、黙ってアパートの敷地へ入って行った。
「……」
 その背中を浅倉南が無言で追う。

 鍵を畳の上に放り投げ、その隣に作業着の上着を脱ぎ捨てる。首周りのよれた白いTシャツ姿で、蛍光灯とテレビのスイッチを入れて、敷布団を折り畳んで背凭れにして座る。ブラウン管が温まってきて徐々に映像が浮かび上がる頃に缶ビールを飲み始めた。
「……」
 引き戸の前に立つ浅倉南は、冷静な表情でその粗野な動きを目で追っている。相変わらず、浅倉南と言う存在に男は何の興味も示さない。何としても、この男を自分の味方に引き込むつもりでいるが、まだその糸口が見えない。
「ちぃっ」
 不意に仁志が舌打ちをした。
 ドクンと浅倉南の鼓動が一つ強く鳴る。
「ガキがはしゃぐのが、何が面白んだ」
 テレビを見ながら、仁志が一人愚痴る。画面には、最近人気のアイドル番組が流れていた。やれやれ、と吐き捨てながらチャンネルをパチパチと変えていく。そして、情報番組で手が止まる。史上3人目の中学生棋士誕生の話題で、十段に勝ったと解説している。
「ガキの中でも、こいつだけは別格だな――」
 唐突に語り始めた。
「テレビの中じゃ、持ち上げられた俄かの天才がゴロゴロしているが、こいつは本物だ。度胸が違う。決して楽をしない。そして、覚悟がある」
「覚悟?」
 思わず浅倉南は訊ねている。
「これだけ優秀なら、一流企業で出世することも、学問を究めることも、美人と遊び回ることも、それに、バランスのとれた人間になることも、何でも可能だったろうが、その全ての可能性を捨てて、一つだけ、勝負の世界を選択した。遊びたい盛りだろうに偉えよ」
「……」
 そのコーナーが終わると視線を浅倉南に向けてくる。「お前はどうなんだ」と問うているようで、浅倉南は胸にちくりと痛みを感じた。
 浅倉南は自分を、容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能の優秀な人間だと自覚している。ただ高校卒業を前に、世界の広さも実感するようになってきた。この広い世界の中では、この程度の実力では、どれも超一流にはなれない。とても万能人とは言えない。
 世間は自分に対して、新体操だけをやることを望んでいる。新体操が嫌いなわけではないが、それだけで生きていくことに不安があった。
 たとえ青春全部をかけたとしても、世界レベルの選手になることは出来ない、とぼんやりながら予知している。『天才女子高生』から、世界ではまるで通用しない『ただのスポーツ選手』と言われ出す日が必ず来る。何より憂慮するのは、そんな批評の自分自身に満足できるかどうか……だった。
 もしかしたら、煮え切れない上杉達也も同じ気持ちなのかもしれない。改めて上杉和也の偉大さを思うが、一方で受け入れ難いものも感じていた。
(ああはなれない……)
 井戸の底のような深い思考に耽っていると、男の声で現実に返ってくる。
「へ?」
「お前も頑固だな」
 仁志は、一本目を飲み干して二本目を飲み始めている。すっかり顔は赤くなって、表情は弛み、また、口も滑らかになっているようだった。
「頑固じゃなくて一生懸命なんです」
 口を尖らせて反論する。
「良いように言うね。人の迷惑顧みないトラブル娘が」
「え?」
 浅倉南は軽い眩暈を感じた。自他ともに認める優等生である。こんな言われ方をされたのは、初めてだった。改めて、ここが、自分が生きてきた世界とは隔絶された異空間だと認識する。
「んで、パンツぐらいまともな物を穿いてきたんだろうな?」
 不思議なぐらい男の声には、いやらしさがない。ハンカチの話でもしているように、然も当然とばかりに言い放つ。その態度の所為で、言葉が浅倉南の心に素直に浸透する。見せることが大人のマナーのような感じさえする。躊躇するのは子供のようで恥ずかしく思えた。
「……はい」
 水面のように穏やかな気持ちで、スカートの裾を摘まみ上げる。そこには、フリフリのフリルのついたシフォンのピンク色のパンティーがある。
「あははは、何とか寝小便は卒業したようだな」
「ひどい……」
 浅倉南が頬を膨らます。持っている中で一番のお気に入りである。
「後ろ向いて見ろ」
「……」
 不満そうな顔のまま、しかし、言われた通りに行動する。おそらく、圧倒的な経験値の差が、この場の主従を決めているのだろう。
「何だよ。ケツが全然見えねぇじゃねえか。蒙古斑でも隠しているのか?」 
 仁志が身勝手な失望の声を上げる。
「そんなの……ありません!」
 否定するのも的外れのような気がしたが否定しない訳にもいかないだろう。何処で釦を掛け違えたのだろう、と頭の片隅で考えているが答えが出ない。
「ほお、確かめてやんよ」
「ちょっ!」
 その時、仁志が両腕を伸ばして、パンツの端を挟んで上げた。まるで褌のようになってしまい、つるりとした尻の肌が露わになる。
「ちょっと、何をしてるんですか?」
 焦り切った上擦った声で抗議し、その腕を手で叩き落とそうとする。
「本当にねえや、あははは」
 しかし、その僅か直前に仁志はパンツを離している。そして、笑いながら寝転ぶ。
「酔ってるんですか?」
 口を尖らせて、強い口調で非難する。
 しかし、仁志は無邪気に微笑んで、ビールを飲み続けた。そこには第一印象の厳つさはなく、少年のようにさえ見える。
「まったく……」
 浅倉南はため息を一つ落とす。
「ほら、見ろ」
 ふいに仁志は時計を指差す。
「電話があるのは、6時ぐらいだ。今夜はもうないだろうよ。とっとと帰りな」
「ええ(6時か……)」
 ようやく、一つ新しい情報が手に入り、浅倉南は静かに頷く。
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