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ーchapter2ー紆余曲折の合コン参加
作:クマ紳士連絡
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2019/04/06
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クマ紳士

環が待ち合わせ場所の店に着いたのは、18時を回ったところだった。普段あまり立ち寄らない街中の居酒屋が立ち並ぶ通りだ。九条院からは決して近くはなく、電車での移動もあり時間がかかった。どうやら待ち合わせ場所は例に漏れず居酒屋らしく、魚料理と酒を謳い文句に店を出しているらしかった。店内に入り、予約している名前を出すと、奥のお座敷へと通された。

「お、やっと来た。おせえぞ、環!」

「あ、やっほー! 環ちゃん!」

「ごめんなさい、遅れたわ」

襖戸を開けるとすぐに中に居た女性から声がかかった。ボーイッシュな黒髪の木櫻愛生〈キザクラ アキ〉と栗色の髪を二つのお下げにした栗原美香〈クリハラ ミカ〉だ。環は2人を確認すると靴を脱いで中へと入った。

「何飲む? アタシらは頼んだけど」

「じゃあ烏龍茶で」

愛生が店員を呼び、烏龍茶を頼んでくれた。2人の手元にはコーラとオレンジジュースが置かれていた。アルコールが少し苦手な環は、2人がお酒を頼んでいなくて良かったと大きな胸を撫で下ろした。

「環ちゃん、来てくれてありがとう~! 大学から少し離れてるし、環ちゃん達のお家ともちょっと離れてるよね」

美香の言葉に環は、大丈夫よと軽く返した。確かに少し距離はあったが、気にするほどでもない。帰りも電車に乗ればいいし、駅から自宅へは距離もない。

「美香、環なら大丈夫だって言ったろ? 帰りだってさ、愛しの彼氏君が家で待ってるんだからさ」

愛生の揶揄うような言葉に環は苦笑を返した。嫌味に聞こえるかもしれないが、2人が貴明と環の事を祝福しているのを知っていたから、怒ったりはしない。事実、大学に入る時2人は同棲を始めた。元々は向坂の家に弟の雄二と3人で暮らしていたが、九条院に入るに辺り、向坂家から通うには九条院は遠すぎた。環は向坂の家に掛け合い、自分の将来のためにと向坂所有の古民家を一つ間借りしていた。バイトをして2人で稼いだお金でアパート暮らしも考えたが、貴明のために中止した。九条院の講義は難問ばかり、合格したとはいえ、貴明には厳しい。勉強する時間を削るのは得策ではないと判断した結果だった。

「いいなぁ。彼氏と2人暮らし。いいな、いいなぁ~」

美香に羨望の眼差しを向けられ、環はからかわないでと苦笑い。しかし、美香にとっては彼氏がいる時点で環を上に見てしまう。美香は童顔で背も低く、スタイルにも自信がない。環に以前口にしたら、私は美香ほど可愛くなれないと言われた。可愛いより、綺麗の方が強いと思うと今も昔も美香は思った。だからこそ今日、この場を設けたのだ。

「もういいでしょ。せっかくの女同士の食事会なんだし、別の話しましょうよ」

「女同士だからこそ、恋バナだろ?」

「そうだよ! あ、環ちゃん、今日はスカートなんだね。いつもズボンのイメージだから、珍しいかも」

「そうね。たまにはスカートで出かけるのも良いかと思って」

美香が環の姿に目敏く反応を示した。確かに美香の言う通り、環は大学ではスカートをあまり履かない。動きやすく、着慣れたズボン系を好んで着ている。貴明と一緒に通っていた高校では制服はミニスカートだったが、今はほとんど履いていなかった。今日履いて来たのは、自由だった高校時代を思い出してのものだ。貴明は何も言っていなかったが、環は彼にも意識して欲しかった。ミニスカートから伸びるハイニーソックス。さらにはカモシカのような長く細い足は、そこらのモデルが裸足で逃げ出すほどの脚線美だった。

「トップスもさ、何だかオシャレ〜だよね。Vネックのブラウスで色も春らしくて素敵。環ちゃんはスタイル良いから、何着ても似合って羨ましい」

「そんな事ないわよ。私、可愛い系は似合わないし。オシャレって言われても、私そんなにお洋服買ったりしないから」

2人に詰め寄られ、環は苦笑を返す。そんなに上に担がれても、どう反応していいか困ると環は独りごちた。2人とは友達で居たいのに、変な偶像化をされてしまいそうだと感じた。環が話題を変えようと口にした時だった。店の外が少し騒がしくなり、やがて環達がいる部屋の襖が勢いよく開かれた。

「ち〜っす! ヤロー組到着ぅ!」

「え……?」

突然、座敷部屋の襖戸が開くと、三人の男達がズカズカ入って来た。環は突然の乱入者に言葉を失ってしまった。部屋を間違えているのでは? と声を掛けようとすると、

「大丈夫〜! こっちも今揃ったから〜!」

「マジ? タイミングバッチリじゃ〜ん!」

美香が自然に入って来た男の一人と会話していた。仲が良さそうにも見え、マジマジと観察する。すると、男達が環に気づいた。

「お! お、お、おー!? 誰、この子? 二人の友達? 美人ちゃんじゃん!」

「マージマジマジじゃん! 初めましてー、彼氏いる? 居ないなら俺と付き合わない?」

襖戸に一番近い位置に座っていた環に二人の男が詰め寄ってきた。矢継ぎ早に質問され、さらにはデリカシーのかけらもない台詞が続き、環は腹が立った。

……なんなの、この男達? 失礼な台詞ばかり。この人達も一緒なの?

改めて男達を観察すると、一人は短い金髪に片耳ピアス。一人は黒髪に剃り込みを入れ、顎髭を生やした男。二人とも明らかにチャラついていて、環が大っ嫌いな部類の人間だった。こうした手合いの人種に声を掛けられるのは、環は一度や二度ではなかった。街中を一人で歩けば、二回に一回は声を掛けられる。しつこいナンパの手合いには、きついお仕置きをした事もある。

「や、やめなよ〜! 環ちゃん、困ってるし!」

「……私、帰るわ」

言うが早いか環は席を立った。自らを取り囲んでいた2人組の男を押し退け、出て行こうとする。美香が男達を止めようとしたが、環は耐え切れそうになかった。軽薄な男達と一緒の席に座るなんて、考えられないと思った。

「環、待てって! そう怒らないでさ、軽い合コンみたいなもんだから! 居るだけでいいからさ。な?」

「嫌よ。私は二人とお食事って聞いたから来たの。こんな人達がいるなら、私は来なかったわ」

合コン、というワードに環は益々不快感を覚えた。男女が出会い目的で会う食事会になんて、参加出来るはずが無いと環は思った。二人が環に黙っていたのも腹が立つし、貴明に嘘を付いた形になったのが一番許せなかった。

……これじゃあまるで、タカ坊に嘘を付いて合コンに来たみたいじゃない。そんな恥知らずな真似、絶対にイヤ。

環の怒りは顔に出てしまったようで、周りの男達や愛生や美香も怯えてしまっていた。話は終わりとばかりに部屋を出ようとすると、

「ーー帰んない方がいいんじゃない?」

環の前に一人の男が立ちふさがった。環が見上げたのは、細身の男。しかし、服の上から分かる鍛えている男の筋肉。細身だが優男ではない。肩まで届く茶髪の長髪。目尻が僅かに下がってはいたが顔立ちは整っていた。先程の2人組の仲間だろう。

「退いて。邪魔よ」

苛立ちを隠さず命令口調で告げる。男を睨み上げるが、相手の男は口元を軽く曲げた。

「君はどうか知らないけどさ、お友達は食事会を楽しみにしてたんじゃないの? 場の雰囲気を壊して行くの?」

「私だって……」

男の言葉に環は口ごもる。予想外に核心を突かれ、言葉を濁してしまった。初めて大学の友達との食事。話そうとしていた話題もたくさんある。環にとっては堅苦しい九条院の中での唯一の休息。この男達さえ居なければと、環は拳を握った。

「合コンが嫌かもしれないけどさ、食事だけでもしとこうよ。料理、予約してたんでしょ? お友達の好意、無駄にするの?」

「……」

馴れ馴れしい物言いだったが、一方的に会話を打ち切って帰ろうとしてしまったのは事実。合コン、というワードに過敏に反応し、貴明を裏切りたくない感情から行動してしまったと環は反省した。彼はもちろん大事だが、彼女達も大事な友達だ。環が帰ることで、確かに2人に迷惑を掛けてしまいそうだと、環は悩んだ。

「ごめんね。でもさ、羨ましかったんだ。環ちゃんと貴明君、ラブラブでさ。私も彼氏欲しいなって。でも一人だと不安で……。環ちゃんが傍に居てくれるだけで安心出来そうだったから……」

美香は泣きそうだった。潤んだ瞳を向けられ、環の心が傷んだ。美香はそういう女の子だった。羨ましいと口にしていたのは偽りではなく、正直な彼女の気持ちなのだ。そういう所が可愛く、環は好ましいと感じていた。

「アタシもごめん。けどさ、いつも目の前でイチャつかれてさ、羨ましいって感じたのはアタシもでさ。この間声掛けられて、あっちは3人だって言うから環がいればって……ごめん」

愛生からも頭を下げられ、環はますます心苦しい思いでいっぱいだった。愛生も美香も祝福してくれているから、友達だから大丈夫と高を括っていた。その反動がこれだ。彼女達は普通の女の子なのだ。目の前で彼氏とイチャイチャしていたら、羨ましくもなるだろう。むしろ、恨みがましく思われても仕方ない。

「環ちゃん、やっぱり帰っちゃう?」

2人に泣きそうな顔で見られ、罪悪感が押し寄せてくる。騙し討ちはされたが、ただの食事会と思えばいいだけ。環は頭の中で言いたい言葉を何度か反芻し、怒りを打ち消した。

「はー……。分かったわ。もう少しだけいるわ。ただし、今度からはきちんと言ってね」

席に戻り、座り直すと2人から環へありがとうとお礼を口にされた。環は2人にとっては大事な出会いの一つだしと考え、彼氏がいない2人の前で貴明とイチャついてしまっていた事を少し反省した。誰にも邪魔されず、気にしないとは考えていたが、大切な友人が辛い思いをするなら少し自重しなくてはいけない。2人はいつも笑って見守ってくれていたし……今日は付き合おうと環は独りごちた。

「ねえ」

「なんですか」

「君、俺とどこかで会ったことない?」

座り直した正面の席には、茶髪の馴れ馴れしい男。口調は柔らかいが、どこかこちらを見定めているような視線を送ってくる。イヤらしい視線にも思えたが、環は無視しながら答えた。

「ないわね。私の知り合いに、貴方みたいなチャラついた人はいないわ」

バッサリ切ったつもりだが、男は笑みを返してきた。余裕のつもりかもしれないが、どこか気に入らない。

「そっか、よろしくね。環ちゃん」

男の馴れ馴れしい態度は止まらない。しかし、いざとなれば力でねじ伏せてしまえばいい。

ーー私は、油断なんかしない。
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