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作者:クマ紳士
12. ーchapter12ー隷属のドライブデート
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「満足したぁ! また頼むぜ……環ぃ」

獅王はそれだけ言うと、さっさと服を着て部屋から出て行った。環は身体中がかき回された感覚に陥っていた。熱に浮かされ、酷い脱力感に襲われた。獅王は時折、休憩と称して水分を補給し、環にも飲ませていた。半日掛けてのセックスは、身体から水分を極端に奪っていた。

「はぁー! はぁー……ッ! はぁー……ッ! はぁ、はぁ、はぁ……」

環は息も整えられないくらい犯され、頭が真っ白になっていた。部屋中から噎せ返るようなセックスの匂いがした。環の部屋が、まるで性行為のためにある風俗の店のようだった。

今日、講義、出なきゃいけないんだっけ? タカ坊と、約束したのよ。私、今日はタカ坊に元気な顔、見せるって……約束……。

環は頭がおかしくなりそうになりながらも、今日の予定を整理していた。陰部がヒリヒリと痛み、身体中脱力感が酷かったが、貴明が待っていると身体を起こした。性器から垂れ落ちる獅王の精子を見て悲しくなったが、ティッシュで丁寧に拭き取った。見れば枕元には、獅王が置いて行ったアフターピルがあった。

「……これを飲めば……。今は、頼るしかない。妊娠なんて、絶対嫌よ……」

環は獅王から渡された薬を飲んだ。避妊薬は早ければ早いほど効果が出ると考えた。時刻を見れば、朝の6時を過ぎていた。貴明はおそらく、まだ夢の中。環は貴明が起きる前にとシャワーを浴びた。獅王に触られ、穢された身体を念入りに洗う。

……タカ坊だけの身体。今は、アイツにも触られた身体。私、何をしているの?

風呂場の鏡に映った自分の裸を見て、環は自問自答する。抵抗も出来ず、好き勝手されるだけの女だったのかと、自分を卑下する。そんな弱い女ではないと、拳を握った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

朝食を作り、朝の8時を過ぎると貴明が起きてきた。欠伸をしながら、呑気に挨拶してくる。

「ふわぁ〜あ。タマ姉、おはよう」

「……おはよう、タカ坊……」

環は貴明と顔を合わせられなかった。昨日の獅王との行為を、本当に貴明は聞いていなかったのか? もし、もし聞かれていたなら、どんな顔をして貴明と話せばいい? と、環は胸が張り裂けそうな思いだった。

「そう言えばさ、昨日……」

「ッ!?」

「タマ姉、苦しそうだったよね? 大丈夫? その、生理痛とかさ」

貴明の言葉に、環は一瞬言葉に詰まる。これは、本気で聞いてきているのか、はたまた環にカマを掛けているのか判断が難しかった。固まった環を、貴明は心配そうに見つめた。

「タマ姉? もしかして、まだ痛むの?」

「え……? い、いえ、大丈夫よ。タカ坊。もう痛まないから……」

貴明は環の言葉に胸を撫で下ろした。貴明の反応を見て、環は彼が本気で心配してくれたのだと分かり、ズキズキと胸が傷んだ。嘘に嘘を重ねる自分は、どれだけ最低な行為をしているのか。最愛の彼氏に、環は嘘を吐く事が当たり前になってしまっていた。それが分かり、環はますます心を痛めた。

「……ねえ、タカ坊……」

「うん?」

「昨日の夜、よく眠れた……?」

環は貴明の顔色を伺いながら、昨日の夜について訊ねた。貴明の返事が恐ろしかったが、やはり聞かずにはいられなかった。環は昨日、我慢出来ずに喘ぎ声を上げた。獅王だって、時々貴明に聞こえるような声で話していた。あれを、貴明が聞いていないと言うのは……考えにくかった。

「昨日? んーまあ……眠れたかな? 本当はタマ姉と寝たかったけどさ」

貴明は環に笑顔を見せた。環は貴明の言葉に安堵と失望を感じていた。自分が犯されている間、貴明は何にも気付かず安眠していたと言うのだ。環は貴明の言葉に、失望の色を隠せなかった。

「昨日は色々あったしさ、変な人達に絡まれたし、九条院の勉強でヘトヘトだったし……」

「だ、だからって! タカ坊、夜に変な音聞こえなかった? 変な声、とか……」

環は、自分が何を言っているのか分からなかった。こんな事を聞いて、自分は貴明にどうして欲しいと言うのか。自分が上げた喘ぎ声を貴明が聞いていたと答えられたら、環はどうするつもりなのか。環は生唾を飲み込み、貴明の言葉を待った。そして、それは、

「変な音や声? ごめん、分からなかった」

「……」

環は顔を苦渋に染めた。なぜ貴明は、気づいてくれないのかと、勝手な思いに駆られる。もしかして、気づいていながら、怖くて部屋に踏み込んでくれなかったんではと、勝手な思考に囚われた。

「タマ姉、昨日の夜、何かあったの?」

「……別に、ないわ……」

環は、それだけを口にし貴明の前に朝食を並べた。貴明は、環の機嫌が明らかに悪くなったのを確認し、何か怒らせるような事をしただろうかと必死に頭を働かせる。しかし、何も思い浮かばない。ただ、

「タマ姉、もしかして昨日、眠れなかったの?」

「……」

環は答えられない。寝ていないのは事実。眼が充血し、身体はふらつくが、今日の講義は休めない。環は気合いで乗り切るつもりだった。

「だったらさ、今日の夜はコレ飲んでみて」

「……なに、コレ?」

貴明が胸元のポケットから、何かの薬を取り出した。白い錠剤が2つ。貴明の手の平に置かれていた。環は不審に思ったが、貴明は環を安心させようと笑いかける。

「安眠剤だって。昨日は色々あったから寝れそうにないですって言ったら、獅王さんがくれたんだ」

「ッ!!?」

環は驚きに目を見開いた。いつの間にと環は息を飲む。獅王は環に手を出す前に下準備として、貴明に睡眠薬を渡していた。貴明が睡眠薬を自ら飲むよう仕向け、準備し、手渡した。全部、獅王の手の平の上だった。環は悔しさから、下唇を噛み締める。

「……タカ坊、ごめんなさい。もう二度と、あなたを疑ったりしないわ」

「疑う? 何の話? タマ姉?」

環は貴明に謝罪した。少しでも貴明を疑い、失望した自分を殴り飛ばしたくなる。口に出してしまい、貴明が首を傾げたが、環は言葉に出して謝りたかった。貴明の身体を抱きしめたかったが、獅王に朝まで穢された自分にはその資格はないと思った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから、3日が経った。獅王とのセフレ契約を結んでから4日目の午後。環は、九条院での本日の受けるべき講義を終え、貴明より先に自宅へ帰る所だった。

「お姉様〜! 待ってください!」

「あら、玲緒菜」

九条院の校舎を出た所で呼び止められ、後ろを振り返れば、玲緒菜が環に駆け寄ってきた。見れば、薫子やカスミも一緒だった。相変わらず3人で一緒に行動している姿に、環は微笑ましく笑みが零れた。

「お姉様、今おかえりですか?」

「ええ。あなた達も帰り?」

環の返事に3人が頷いた。自然に環を囲むように隣を歩き出してくる。環をお姉様と慕う3人は、九条院での長い付き合いだった。貴明の通う高校に環が転入した際、すぐ様環を追って高校に転入してきた事もある。環を崇拝し、環に恋焦がれていると胸の内を話されたこともある。

「だったら、帰りに寄り道致しませんか? 美味しいって評判の和菓子屋を聞いたのです!」

「ぜひ! お姉様も!」

「ぜひ! ぜひ!」

玲緒菜と薫子が環に前のめりに近寄り、矢継ぎ早に迫ってくる。見れば、カスミも口には出さないが、何度も頷いて環の同意を得ようとしてくる。

……相変わらず、激しい子達ね。慕ってくれるのは嬉しいのだけれど、こう迫られると戸惑うわ。

環は眉を下げ、困った顔を浮かべた。今日は特に予定もないし、貴明も講義はガッツリ受ける予定だ。さらには九条院の勉強について行こうと、教師から教えをこうために、貴明は夕方以降も残って勉強する日もある。環が教えると言っても、貴明は環に負担を掛けたくないと最近は環に教わろうとしなかった。

「お姉様、もしかして何かご予定が? ダメですか?」

「お姉様……?」

「……?」

「うぅ……!」

環は3人の縋るような瞳を向けられ、胸が苦しくなった。何も悪いことはされていないのに、彼女達から逃げようとした自分を恥じた。慕ってくれる玲緒菜達には、全く悪気はない。環にとって、一方的に崇拝され、崇められるのは苦痛も伴っていたが、それでも玲緒菜達は悪くない。彼女達の思いを無下にする事は、環の心情が許さなかった。

「はぁ……負けたわ。良いわよ。今日は付き合ってあげる」

「「「〜お姉様ッ!!」」」

環の了解を得て、玲緒菜達は喜びのあまり環の腕に抱きついた。3人に抱きつかれ、環はさすがにバランスを崩しかけた。それでも何とか体勢を保ち、自分を慕う玲緒菜達の笑顔を見て、環は胸が温かくなった。

「お姉様、そう言えば今日はあの男は居ないんですの?」

「タカ坊のこと?」

環が聞き返すと、玲緒菜達は首を縦に振った。玲緒菜達は環と一緒に歩きながらも興味津々といった様子だった。

「タカ坊なら、今日は午後も講義よ。遅くなるって言ってたから」

口にしながら、環は少し寂しい気分になった。勉強ならば、環にも教えられるのに、貴明は首を縦に振ってくれなかった。環に迷惑が掛かるからの一点張りだ。貴明も時々意地を張る場面があり、環も貴明に惚れた弱みがあり、強くは出れない時があった。

「お姉様を放っておくなんて、ありえませんわ!」

「お姉様と一緒にいるのが幸せですのに!」

玲緒菜と薫子が怒りを顕にし、カスミも2人に同意するように頷いていた。環は玲緒菜達が自分の代わりに怒っているようで、言葉にしずらい感情を抱いた。

「ありがとう。でもね、タカ坊は私のために頑張ってくれているの。向坂に認められる為には、九条院で結果を残さなきゃ。分かるでしょ?」

諭すように3人に告げると、玲緒菜達は素直に頷いた。貴明の努力を、玲緒菜達も理解してくれていた。最初に出会った頃は、貴明に対し殺意にも似た憎しみを抱いていた3人。環を自分達から奪った恋敵。それが、3人にとっての貴明の立ち位置だった。けれど、

「タカ坊は、私のために九条院に来てくれた。それだけでも、私は嬉しいわ。愛されてるって、実感がある」

環は貴明の顔を思い浮かべ、はにかんだ。恋する乙女全開の表情を見せられ、玲緒菜達は環の顔から目が離せなくなると同時に、貴明を羨ましく思った。

……お姉様のこんな顔、見たことない。悔しいけれど、あの男しかお姉様を幸せに出来そうにありませんわ。

玲緒菜は貴明に負けたと思い知らされた。女である自分は、環の隣に立てない。環に対する愛の重さでも叶わなかった。

「もちろん、九条院の皆も大事よ。私が育った場所だもの。玲緒菜達も大事な妹分だわ」

「お姉様……!」

環のこうした台詞や態度が、玲緒菜や他の生徒達を魅了してしまう魅力だった。環の言葉に嘘はなく、皆を引っ張る強さをいつも感じさせてくれた。玲緒菜達は、環に一生ついて行こうと改めて誓った。

「……あら? 何かしら? 人だかりが出来てますわ」

薫子が九条院の校門前に人だかりが出来ているのを見た。環達も気付き、なんだろうと校門前の人だかりに目を向ける。すると、

「だから、人を待ってるだけですって」

「門の前で駐車するなんて恥知らずな。ここは君のような男が立ち入っていい場所じゃあない! さっさと帰りたまえ!」

見れば九条院の校門前で守衛らしき男と茶髪の髪の長い男が揉めているようだった。白いボックスカーの前で揉めており、どうやら車を堂々と九条院の前に駐車したのが原因らしかった。そのやり取りを物見遊山よろしく九条院の生徒達が遠巻きに見ていた。

「なんですの……? 由緒正しき九条院の前に駐車するなんて、考えられませんわ」

「ですわ。見た目もとても誠実そうにも見えませんし、関わり合いになりたくないですわね。ね、お姉様?」

「……ッ!」

玲緒菜と薫子が声を潜めて話す中、環は車の持ち主である男の顔を見て、絶句してしまう。環の顔色が悪くなり、環は目の前の出来事から目を逸らしてしまいたかった。しかし、

「あ! 環ちゃん!」

「ッ!?」

環と目が合った。合ってしまった。守衛と話していた茶髪のロン毛男が環の名前を親しげに呼んだ。九条院の守衛も、周りの九条院の生徒達も玲緒菜達も困惑した。呼ばれた環も身体を強ばらせた。茶髪の男は獅王だった。

「環ちゃん。このおじさんに言ってやってよ。私の親しい友人ですってさ」

獅王はあくまでも軽いノリで環に助けを求めた。口元をニヤケさせ、環の反応を楽しんでいた。環は口を開けずにいたが、周りの野次馬達は獅王と環の関係を噂し始めていた。

……こんな人通りの多い所で、なんで……ッ!

環は悔しさから歯噛みする。口になんてしたくない関係だったが、獅王を放っておけば、何をするか分からない。このまま放置は出来ない。環は震える唇で、獅王との関係を口にする。

「すみません……彼は、私の知り合いです。私から言い聞かせますから、この場は収めて頂けませんか?」

環は守衛の男に頭を下げた。環が頭を下げた事で、周りがどよめいた。九条院で絶対的な発言権を持つ環が頭を下げるなんて、見たことがなかった。周りの生徒達は、有ることないことを口々に噂し始める。

「あー……。頭を上げたまえ。君は悪くない。君のような優秀な生徒に頭を下げられたら、他の生徒達がびっくりするだろう?」

「申し訳ありません……」

守衛が困り果て、後ろ頭をかくが、環は頭を上げなかった。獅王を庇い立てする環に守衛は疑問を感じたが、環にここまでされては引き下がるしかなかった。

「分かったよ。君から是非言っておきたまえ。九条院には部外者は立ち入り禁止。路上駐車ももちろん許可しない」

「……はい」

環は頭を下げたまま、守衛の言葉を胸に刻む。まるで獅王の保護者のように、ただただ頭を下げた。

「すぐに車を動かすように。いいね。他の生徒達も用が無いなら帰りなさい」

守衛の男が周りの野次馬達に告げる。野次馬の生徒達は、蜘蛛の子を散らすように校門前から離れていく。守衛の男も環に任せたと言って、校舎の方へ戻って行った。残されたのは環と獅王。それに玲緒菜達3人だった。

「助かったよ。環ちゃん。さすがは九条院のお姉様。君の言葉を皆信じてたね」

「……」

獅王が環に近づき、環の肩に手を置く。正面から環を見下ろす獅王は、押し黙る環の反応を面白そうに見つめていた。

「……何の用?」

環がようやく口を開く。ぶっきらぼうに告げられた台詞に、獅王は満面の笑みで返事を返した。

「迎えに来たんだ。これからドライブに行こうよ。俺の車でさ」

獅王は環の肩から手を離し、環の髪を一房手に取り、指で遊び始めた。環は獅王の手で髪を弄られても、手を振り払うことも、声を上げる事も出来なかった。

……いきなり来るなんて……。3日間、連絡は一切なかった。タカ坊にも、嘘を吐かなくて良かった。けれど、いつ連絡が来るのかと、気が気じゃなかった。

環は身体が震えてしまうのを止められなかった。三日前に獅王に身体を好き勝手にされた事を思い出した。獅王のニヤケ面が恐ろしい。環は獅王と目を合わせられず、逃げるように顔を背けた。環の弱々しい反応に、獅王はますます口元を歪めた。そのまま唇でも奪ってやろうかと獅王が環に顔を近づけようとすると、

「お姉様から離れなさいッ!」

「いってッ!?」

環の髪を弄っていた獅王の手を払われた。2人の間に割って入るように玲緒菜が獅王の手を叩き落としていた。

「玲緒菜……」

環は玲緒菜の反応に驚きを隠せなかった。玲緒菜は驚いている環を後ろに庇うように、獅王の前に立ちふさがった。薫子や菫も玲緒菜に続く。

「なに……君たち? 俺と環ちゃんがイチャついてるんだから、割って入らないでくれる?」

獅王は顔を僅かに顰めていたが、まだ余裕のある態度だった。自分と環の間に壁のように立ち塞がる玲緒菜達に目を向ける。玲緒菜達は、負けじと獅王を睨み上げた。

「お姉様に対し数々の不躾な態度! さらには、お姉様を馴れ馴れしい呼び方! 貴方なんか、お姉様の目の前に存在する事すらおこがましいですわ! 早く消えなさい!」

玲緒菜は語気を荒くして獅王に食ってかかった。噛み付かんばかりの態度を取られ、さすがの獅王もむかっ腹が立ってきた。眉尻に皺がより、整った顔が歪んでいく。

「玲緒菜……薫子……カスミ……」

環は玲緒菜達に守られようとする自分が情けなかった。あれだけ皆を引っ張るような口ぶりをしながら、実際はこのザマだ。大好きな九条院の子達の前で、獅王の言いなりになるのは環の心情が許さない。

「……今日はこの子達とデートなの。悪いけれど、今日はお引き取り願えるかしら?」

環は意を決して獅王に告げた。獅王の眼光が鋭さを増し、環を射抜いた。あれだけ身体に教え込んでやったのに、まだそんな態度を取るのかと獅王は腹立たしく思った。環を守ろうとする3人娘も邪魔だった。生意気に獅王を睨み付け、環を守れるつもりでいる。

クソ生意気な取り巻き女共。ガキくせえ身体見せつけやがって。犯してやっか、コイツら……!

獅王は心の中でそう吐き捨てつつ、玲緒菜達の身体を見定めていた。可愛い顔立ちはしているものの、気の強そうな釣り上がった瞳。環を守ろうと身体を張って止めようとしている。身体付きや仕草から、おそらく処女だろうと踏んだ。それを確認し、獅王は舌なめずりした。

「じゃあさ、環ちゃんの代わりに君たちが車に乗ってよ」

「ッ!? ダメよ! 馬鹿言わないでッ!」

獅王の提案に環は怒りを顕にしながら、すぐ様却下した。玲緒菜達は困惑しながらも、獅王を伺うような瞳を向けていた。

「環ちゃんが相手してくれないからじゃん。それにさ、環ちゃんには関係ないでしょー。3人がいいならさ」

「ダメよ! 絶対ダメッ!」

環は玲緒菜達を後ろ手に庇った。獅王の視線から隠すように玲緒菜達の前に出る。焦りから声が上ずり、額に汗をかき始める。

「お姉様……? 私達は、あんな男の車に乗ったりしませんわ。ご心配頂けるのは嬉しいですが、何だか、お姉様の方が苦しそうですわ」

玲緒菜が環の手に触れ、心配そうに見つめる。玲緒菜の言う通り、環の方が追い詰められているかのようだった。環も玲緒菜達は付いて行ったりしないと考えてはいるが、獅王は油断ならない相手だとも理解していた。

美香みたいな犠牲をこれ以上出したくない! 私の代わりになんて、絶対ダメよ!

環は獅王に鋭い目を向ける。玲緒菜達は環の反応が明らかに違うことに戸惑っていた。普段の環ならば強気に相手を攻め、屈服させているはずだった。余裕なく慌てふためくだけの環は、明らかにおかしいと玲緒菜は思った。

「これ以上騒ぐなら、人を呼ぶわ。場合によっては警察も呼ぶ」

「へぇ……。そういうことするんだ」

環は生唾を飲み込んだ。獅王を引き下がらせるには、人質を取られている自分ではダメだと感じた。応援を呼ぶ仕草を見せれば、獅王は引き下がるかもしれない。環は獅王の出方を伺ったが、獅王は既に予想済みのようだった。

「いいよ。呼べば? ついでに見てもらおうか? 環ちゃんと俺の関係をさ」

獅王は胸元から携帯をチラつかせた。環はそれだけで顔を青ざめる。貴明だけでなく、環自身の痴態も既に人質に取られていた。玲緒菜達に、環の犯されている姿を見せる事になる。

……私が、付いて行けば……全部、丸く収まる。私が、耐えれば……。

環は自分を取り除いた世界を守ろうとしていた。玲緒菜達が見ているお姉様である環。その姿を壊したくない。九条院の人達にも、知られたくないと考えた。周りが知れば知るほど、貴明の耳に入る可能性が高くなる。

「……玲緒菜、薫子、カスミ」

「お姉様……?」

環が背に庇った玲緒菜達が不安そうに環の背中を見ていた。普段と違う環は朧気で、消えてしまいそうな儚さを感じさせた。玲緒菜達の名を呼んだ環は、彼女達に振り返って顔を見せるが、

「……お姉様……」

泣きそうな、今にも崩れ落ちそうな顔だった。それでも心配掛けまいと環は無理やり笑みを作っていた。

「ごめんなさい。私ね、この人と先約があったのを思い出したの。寄り道は、また今度……ね?」

環は、獅王に従う道を選んだ。
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