ななせ先輩の日常 ~制服編~
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忘却のイグドラシル
エガオノリユウ
露出系魔法女子大生クリスティア
卵の鍵
パワフルメモリアル
作者:しょうきち
10. サンキューユウコ
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 早乙女好雄を引き連れ、朝日奈夕子が向かった先は、夜になればどぎつい原色のネオンが煌めく、雑居ビルの立ち並ぶ繁華街であった。
 今は時刻は昼間である。しかし、ここ日本一とも目される繁華街は、昼も夜も変わらず様々な人種の老若男女が入り乱れるサラダ・ボウルと化していた。
 ガヤガヤと煩いディスカウント・ストア、タイ人の経営する古式マッサージ店、ネパール人の経営するインドカレー専門店、コンビニ前にたむろする煙草ゆらめく人々の雑踏を掻き分け、ナンパやホストの勧誘をいなしつつ、二人は街の奥へと突き進んで行った。
 好雄は夕子の後ろをはぐれないよう、恐る恐る付いて行っていた。
「おい夕子、お前、普段からこーいう処に入り浸ってるのかよ」
「フフーン、好雄ってば、コ・ド・モ? イマドキのJKなら、このくらいジョーシキよ」
「お、おいお前……、一体何処に向かうつもりだよ? まさか……」
(そういえば夕子のヤツ、暫く見ない間に随分大人っぽくなったよな……。俺の知らない処で、男遊びでも覚えてんのかな……?)
「なーにブツブツ言ってんの。着いたわよ」
 道端の吐瀉物を避け、お城の様な建物の並ぶ暗い路地を通り抜けた先でたどり着いた場所は、繁華街の中心にしては異様なまでの敷地面積を誇る、緑色のネットに包まれた大型バッティングセンターであった。
 店のエントランスを潜ると、営業をサボるサラリーマンと思われる、ワイシャツを肩まで捲った中年男性や、胸元が大きく開き、 ジャラジャラと派手めのアクセサリーを身に付けた女性など、様々な人達が思い思いにバットを振るっていた。
「ここは……。繁華街のど真ん中にこんなデカいバッセンがあったのか……」
「あたし達が遊びに来るトコなんて、こーゆートコに決まってんじゃん。都内じゃここがね、一番コスパが良くて沢山打てるのよ」
「……ですよね」
「さ、好雄 。打つわよ~!」


 夕子は110kmレーンに入り、好雄はその隣の130kmレーンに入ってバットを振るっていた。
 夕子の側からは連続で快音が鳴り響いているのに対し、好雄の側は空振りばかりで快音は4~5球に一度、しかも当たった打球は鋭いスライスがかかり、真っ直ぐ飛ばずにファウルゾーンへと飛んでいっていた。
「何だ、好雄。あたしの方が全然当たってるじゃん。それで本当に野球部なの? バットに当てなきゃお話にならないわよ。ほら、こうやって脇を締めて、バットをしっかり振るのよ」
 挑発的な夕子の言い振りに、好雄はムッとした顔を隠さずに答えた。
「う、うるせえっ!  こちとら筋トレばっかりで、バットなんて全然触ってねぇんだよ! それにこっちは130キロの速球、そっちは110キロの打ち頃の球じゃねーか。そんなに簡単じゃねぇよ!」
「あ、そーゆー事言うの? それじゃ、あたしが打ってあげようじゃないの。好雄、どいて」
「お、おう……」
  気勢を削がれた感のある好雄を押し退けて、夕子が好雄のいたレーンへと入り、バッターボックスに立った。機械に百円玉を入れ、暫く待っていると、ピッチングマシーンからボールが飛び出て、130kmのボールが夕子の元へと迫り来る。
「ふっ!」
 無駄の無い動きで金属バットを鋭く振るうと、辺りには快音が響いた。弾き返されたボールは、正面高くへと綺麗な放物線を描いて飛んで行った。
 そして飛んでいったボールは、『HOME RUN』と書かれた紅白の的へとぽすんと当たって落ちた。
「ねっ、どうよ?」
「おみそれしました……」
 振り向いた夕子のドヤ顔に、好雄はぐうの音も出すことが出来なかった。
  好雄が辺りを良く見渡すと、『祝!月間ホームラン記録55本 朝日奈夕子さん』と、Vサインをした夕子の写真が飾られていた。夕子はこの店の常連であった。


 夕子が好雄と同じ中学出身であった事は既に述べたとおりであるが、更に述べると、二人は同じ野球部に所属するチームメイト同士であった。 
 三年間センターを守っていた好雄に対し、夕子は遊撃手が定位置であり、走攻守におけるそのセンスはチーム内でも随一であった。
 尤も、生来飽きっぽい性格である夕子は、毎日の練習などはしょっちゅうサボって繁華街に繰り出していたのであった。
 
「ふぅ……、いい汗かいたっ!」
 ひとしきり打ち終え、夕子は汗を拭っていた。 バッティングセンター内の様々なレーンを移り歩き、スローボールからスピードボール、更には変化球まで、いずれもピンポン玉のようにポンポンと打ち返していた。
「なあ、夕子」
「ん? なによ」
「お前、今でもそれだけ打てるんなら、マジで野球部、入ってみたらどうだ?」
「え~っ、あたしに野球部入れっていうの?」
「ああ」
「う~ん……、やだ」
「何でだよ!?」
「だって、高校野球って、男子しか出れないんでしょ? 甲子園甲子園って言ってたって、男子しか目指せないじゃん? それなら遊んで回ってた方がマシよ」
「……お前、こないだの野球の全校応援、サボってただろ?」
「うん? 何で?」
「やっぱりサボってたな? 虹野さんが、最後に選手として打席に立ってたっての、知らないだろ? 見てたけどよ、どえがき主将よりいい振りしてたぜ。死文化してるけど、本当は女子が試合に出たっていいんだよ。そんな野球バカな女子が中々いないだけで。実力さえあれば、甲子園だって出れるんだ」
「へ、そうなの? あの虹野さんがねぇ……」
「なんせ、この俺より打てるんだ。夕子なら即戦力だぜ!」
「それはあんまり自慢にならないと思う……」
「それはともかく……、夕子、どうよ!?」
「うん。いいよ~」
「マジか!? サンキュー、夕子!」
「ね、ね、ところでさ、エース候補の高見くんって、イケメン? イケメン?」
「あいつか? う~ん、ま、顔は俺の次ぐらいってトコかな」
「……じゃあ、あんま期待は出来ないって事ね~」
「何でだよ!」
「ま、面白そうだし、やったろうじゃん!」


 こうして、早乙女好雄の伝手により、 朝日奈夕子が野球部へ加わる事となった。
 連日のバッセン通いにより、誰よりもシュアーなバッティングを身に付けている彼女である。
 実力は折り紙つきではあるが、果たしてサボる事無くきちんと野球部に参加するのだろうか。
  
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