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作者:しょうきち
11. 図書室の、眼鏡の奥に光るもの
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 きらめき高校、図書室。
 きらめき高校では夏休み期間中でも図書の貸し出しを行っており、その受付は図書委員が持ち回りで行っている。
 しかし、そこは遊びたい盛りの高校生。
 夏休みだというのに一日中図書室のカウンターに座っていたい者などは誰も居ない。結局、立場も気も弱い者がシフトの大半を押し付けられる事となる。
 薄暗く、静かな図書室。本日カウンターに座っているのは、そんな気弱な一年生女子、如月美緒であった。
 ゆるい三つ編みにメガネを掛けた地味な容姿で、図書委員会に所属し所属部も文芸部と、筋金入りの文学少女である。
 冷房の効いたこの部屋で、美緒は今日も今日とて入荷図書のチェックに勤しんでいた。
「ええと、今回のリクエスト入荷の本は……『野村克也 野球論集成』、『打撃の真髄 榎本喜八伝』の二冊ね」
 きらめき高校図書室では、入荷する本については利用者からのリクエストを定期的に受け付けている。
 このような制度がある事すら知らないか、知っていても利用する気など全く無いきらめき高生は多いが、本好きな生徒にとっては無料で読みたい本を読めるとあって、この制度は一定の人気を博していた。
 また、購入図書については当然ながら図書委員会の年間予算の範囲内という限度がある。予算をオーバーしそうな場合、どの本を購入するかについては、ある程度図書委員の裁量が認められていた。(無論、卑猥な内容の本や爆弾の作り方のような反社会的な本など、高校生が読むに相応しくないとされる本であれば購入が認められないが)
 美緒が図書委員に就任し、生来の気の弱さから委員会の仕事の多くを押し付けられるようになってからは、このリクエスト購入図書については自らの裁量で決めていた。結果、野球関係の書籍の割合が圧倒的に増えていたのである。
 その理由であるが……。


「美緒ちゃん、おはようっ! 頼んでた本、 届いてる?」
「シーッ、沙希ちゃん。図書館は静かに、だよ」
「えへへ、ごめんね」
 扉を勢いよく開けて図書室に入ってきたのは、野球部マネージャーの虹野沙希である。
 美緒は大きな音を立てて扉を開け放った沙希を咎めるものの、声色に怒気は全く含まれていない。二人は親友同士であった。
 尤も、図書室には今、二人以外誰もいないのであるが。
 熱血少女と文学少女では趣味も志向も正反対と思われがちであるが、二人は不思議と気が合った。
「はいっ、沙希ちゃんのリクエスト、二冊とも届いたわよ」
「わぁ、ありがとう、美緒ちゃん」
「あと、はい。読み終えたから返すね。沙希ちゃんが貸してくれたこの『江夏の21球』も、スッゴく面白かったよ」


「特にこれが読みたかったのよ。榎本喜八伝。あのノムさんが畏れのあまり、ささやき戦術を出来なかったと言われる伝説の大打者についての本なのよ」
「私たちが生まれる何十年も前に活躍した、それもマイナーなパ・リーグ選手の評伝を読みたがる女子高生なんて、沙希ちゃん位だよ……」
「でも、榎本喜八は凄いのよ。当時を知るパ・リーグの名選手達は、皆口を揃えて榎本喜八が最高の打者だったと言っているわ。美緒ちゃんも、王貞治は知ってるでしょ?」
「うん、世界のホームラン王ね?」
「そう。その王貞治と言えば、バッティングの訓練の為に、天井から糸で吊るした半紙を真剣で切るとかの、居合道を取り入れたトレーニングが有名よね」
「うん、そのエピソード、私も聞いたことあるよ。練習中は、集中するあまり怖くて巨人のチームメイトも話しかけられなかったんだってね」
「その、居合道をバッティングに取り入れるのを、王貞治以前にやっていたのが榎本喜八なのよ」
「へえ、それは知らなかったよ」
「二人は早稲田実業の先輩、荒川博を通じた兄弟弟子に当たるのよ。居合道や合気道を取り入れたトレーニングを二人に伝えたのはこの人でね、その荒川博によれば、王はまだ気持ちに遊びがあったそうよ。だから大成したとも言えるけどね。榎本喜八は遊びの部分が全く無く、もはや野球ってレベルを通り越して、侍の果たし合いか真剣勝負かのような雰囲気を纏っていたらしいわ」
「そんなに凄い人なのに、全然名前聞いたこととか無いよ。それに、コーチとか監督とかしてるのを聞いたことも無いね。何でかしら?」
「……榎本喜八はバッティングを極めようとする余り、現役晩年はほとんど頭がおかしい人みたいな感じだったらしいわ。理想の体の使い方を求めて悩む余り、打てないときは家中をバットで壊して回ったり、猟銃を持って自宅に立てこもったり、奇行が目立つように なってきたそうよ」
「うう……何だか怖いね。それでも、凄いバッティングの技術を持ってたならコーチとして活躍できたんじゃないのかな」
「それが、無理だったのよ」
「どうして?」
「当時所属していたオリオンズ(現在のロッテの前身)の若手選手の中にも、榎本喜八にバッティングの教えを請いに来た選手はいたのよ。でも……」
「でも……?」
「理論が難解過ぎて、誰にも理解出来なかったのよ。だって、まず『バットは体で振るな。心で振れ』『先ず臍下丹田に気を沈め、五体を結び~』という具合から始まっていたのよ」
「まるで、野球じゃなくて古武術の師範みたい……」
「そう。それで誰もついて来られず、コーチの声もかからなかったみたいね」
「でも、勿体無いね。そんな唯一無二の凄い技術が、誰にも伝わらず歴史の中に埋もれていくのって」
「そうなのよ。 その事を惜しんだあるスポーツライターが、晩年の榎本喜八の自宅に何年も通い詰め、自ら様々な武道や解剖学を学び、何年もの研鑽を積んで書き上げた本が、この 『榎本喜八伝』 なのよ!」
「もう一冊の、野球論集成は、どんな本なの?」
「よく聞いてくれたわ。これはねぇ……」

 きらめき高校図書室において、こういった本の多くを注文している張本人は沙希であった。
 そして、どうせ仕事を押し付けられるならという事で、美緒は沙希のリクエストを優先的に通していた。
 また、今回のリストには無かったが、4月以降からは異常なまでの充実ぶりを見せている、栄養学やメンタルケア、組織マネジメントといったジャンルの本も、多くは沙希のリクエストにより入荷されていたものである。
 猪突猛進な熱血娘であった沙希が、こうした種類の本を貪欲に読み漁るようになったのは、暇さえあればジャンルを問わず、多くの本を読んでいる読書狂(ビブリオ・マニア)である美緒の影響である。
 美緒もまた、虚弱体質でスポーツなどまるで縁の無い暮らしをしていたところであったが、沙希の影響で野球関係の評伝等も読むようになったのである。
 プロ野球に興味を持ち出した美緒が、中でも特にお気に入りのプロ野球選手は、ヤクルトスワローズに所属する眼鏡の捕手であった。最近では、流石に沙希程まではいかないものの、美緒もこのような調子で、沙希とディープな野球談義ができる程の野球通となっていた。
 このように野球好きになってきた影響であるのかどうかは定かでは無いが、最近の美緒は体調も良く、人並み程度の運動なら問題なくこなせるようになってきていたのであった。そして健康になった事から、美緒の心中には、どうしても挑戦してみたい事が生まれ出でていたのだった。
 
「ところで、沙希ちゃん」
「ん、なあに? 美緒ちゃん」
「最近は野球部の方、調子はどう? 確か、3年生の皆が引退してからは沙希ちゃんしか部員が居ないって言ってたよね?」
「うん、勧誘を頑張ってるところよ。 まだ3人だけど、野球部に入ってくれた人達がいるの。もう夏休みに入っちゃってるから、勧誘相手は別の部活に入ってる人や、補修とかで学校に来てる人に限るけどね」
「そう……。それなら私、沙希ちゃんにお願いがあるんだけど……」
 美緒の眼鏡の端が、キラリと光った。
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