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恋椿
作者:クマ紳士
公開
01. ー告白ー
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昼時の公園で、小学生の貴明と環は手を取り合い、見つめ合っていた。2人とも頬が赤いのは、目の前の相手を意識してしまったから。環が事前に人払いしていた為、周りに人はいなかった。環にとって、今日が人生の山場だった。

「タカ坊は生涯私と一緒にいる事を誓います。例え2人が離れ離れになっても、必ず再会し思いを添い遂げる事を……ここに誓います」

「……誓います」

貴明の手を握りながら、誓いの言葉を口にしていた環は、貴明の返事に胸が熱くなった。口元が自然に緩み、頬の筋肉が引きつる。いつもなら嬉しさのあまり、抱きついているところだ。

……だめよ。まだ、だめ。ここからは大人の誓いなんだから。

「た、タカ坊!」

「な、なに? タマ姉?」

手を握ったまま、環は貴明の名を呼んだ。どもりながらも大声を出してしまった為、貴明は腰が引けてしまった。

恥ずかしくない。恥ずかしくない。恥ずかしくない! 大丈夫よ、環!

環は自分に言い聞かせ、自らを奮い立たせた。近所のガキ大将として、時には男らしく振舞っていた環だ。大人の女性を形作るのに、相応の覚悟が必要だった。貴明と手を繋いでなければ、自らの頬を叩いて、気合いを入れていただろう。

「タマ姉?」

首を傾げて戸惑う貴明に、環は意を決して自らを奮い立たせた。

「ち、誓いのキスをするわ! 愛し合う2人は、キスをして初めて結ばれるの! いいわね、タカ坊!」

どこか怒っているように口にしてしまえば、貴明は怯えながらも首を何度も縦に振る。環は貴明が頷いてくれた、とそれだけで嬉しかった。緩みそうになる顔を引きしめ、行くわよと貴明に告げる。

「い、いいよ。初めてだけど、よろしくね……」

目を瞑って待ち構える貴明。環は心の中で、私だって初めてよ! と貴明に不満をぶつけていた。しかし、環のキスを待ってくれていたのも嬉しい。貴明は何度も唇を噛み、薄目を開けて環を待っている。対して環は心臓が煩いくらいに音を出し初め、顔が見る見るうちに赤くなっていく。

どうしよう……恥ずかしくなって来たわ。キスってどうするの? タカ坊の唇、柔らかそう……。私、私は、大丈夫?

環は自分の唇を指で触れる。人差し指でなぞり感触を確かめる。ドキドキと煩い心臓に耳を覆いたくなる。

「タマ姉……大丈夫?」

「だ、大丈夫よ!」

貴明が様子を伺うように聞いたが、あくまで環は虚勢を張った。首を引っ込めた貴明は、ごめんと謝りながらキスを待った。環はタカ坊が謝らないでよ、と心の中で思いながら首を振った。

弱気になっちゃだめ! 私がリードしないと、タカ坊は何も知らないんだから!

環は貴明を見て、覚悟を決めた。せっかく告白が成功したのだ。もう待つのはごめんだ。環は行くわよと口にしながら、貴明へ顔を近づける。やがて静かに聞こえてくる貴明の呼吸。環は自分の口から漏れる呼吸を止めてしまおうと口を閉じた。

タカ坊ぉ……タカ坊ぉ……!

「……! いっ!?」

「あ……」

顔を押し付けるようにした環のキスは、お互いの歯が当たるモノになってしまった。貴明は思わぬ衝撃に、半歩よろめき、環から離れてしまった。

「ご、ごめんね、痛かった?」

弱気になってしまった環は、貴明を気使った。楽しみにしていた貴明とのキスは、一瞬すぎて分からず、貴明にも痛い思いをさせてしまった。貴明が大丈夫だよと口にするも、環はごめんね、と謝るばかりだ。

……失敗だわ。キスするのが難しいなんて、知らなかった。タカ坊とキスするチャンスだったのに……。

落ち込む環は、すっかり肩を落としてしまった。貴明はそんな環を見て、表情を引きしめ、

「……タマ姉」

「タカ……んんッ!?」

自分より背が低い貴明が、一生懸命に唇を重ねてきた。唇同士が触れ合い、環は貴明の熱を感じていた。

タカ坊、これがタカ坊のキス……。大好き、大好き!

環はもっともっととせがむように唇を押し付けた。貴明は環に力で押されながらも柔らかい感触が心地よかった。

タマ姉の唇、柔らかい。それに、タマ姉、こんないい匂いしてたっけ?

普段一緒に遊んでる時は気付かない環の匂い。甘く蕩けるような花のような香りに貴明は頭がクラクラした。環がこの日の為に用意した必殺の香水だった。無断で母親のを使ったが、今は関係ない。どれくらいそうしていたのか、環と貴明はお互いに相手の唇に吸い付くように離さなかった。やがて息苦しくなったどちらかが、名残惜しくも唇を離した。

「はぁ……はァ、はぁ……タカ、ぼ」

「はぁ……はァ、はぁ……タマ、ね」

2人とも既に瞳を蕩けさせ、身体が熱を持っていた。午後になったばかりの公園で小学生の2人は初めてのキスで興奮していた。

「タカ坊、顔、真っ赤……」

「た、タマ姉だって、赤いよ……」

顔を赤く染めながらも、はにかむ環の笑顔を見て、貴明はもう一度キスしたいと感じたが、

「タカぼ……場所変えましょ。ここじゃ、誰か来ちゃうし……それにね」

手を繋いで先を促す環は貴明に耳元で怪しく囁いた。

「もっとすごい事、してあげる」
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