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茜 Lost Virgin
作者:ブルー
公開
03. 女子バスケ部
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 まったくなんという日だったのだろう。ボールの弾む音と運動靴のゴム底が床を蹴る音の交差する放課後の体育館で、茜はそんなことを考えていた。壇上には立ち稽古をする演劇部員の姿があって、隣のコートでは男子バスケ部やバレー部が練習をしている。掛け声がまるで戦場のように右に左に飛び交っていた。
「ナイシュー!」
 シュートが決まるたびにコートの横からも元気な声が上がる。いまはレギュラー組み対補欠組みによるミニゲームの真っ最中で、茜はレギュラー組みの赤いビブスを体操シャツに重ね、ピカピカに磨かれたコートを自陣のバスケットゴールから敵陣のバスケットゴールへ、すぐに敵陣のゴールから自陣のゴールへと全力で駆け回っている。
 ディフェンスをかわして軽やかなレイアップシュートを決めて着地する。他のメンバーと交代するとゴール下の壁を背中にもたれかかり、アニメキャラクターのプリントされたスポーツタオルで汗を拭った。
 コートに良美の姿はなかった。良美は今日も部活を休んでいる。あれから一週間、茜と良美の関係はいささかギクシャクしていた。教室で話しかけられても茜はうまく目を合わすことができず、遊びに誘われてもすべて理由をつけて断った。
 あの日、茜は結局最後まで続けることができずに良美が変わりに処理をしてくれた。床の学生鞄を拾い上げると胸に抱きかかえ、逃げるようにカラオケルームを飛び出したのだ。夕暮れの通学路には、仕事を終えたサラリーマンや下校中の生徒、買い物袋を下げた主婦にランドセルを背負った子供たちがいて、そういったいつもの風景と変わらない中を何人も追い抜いてまたはすれ違い、スカートがはためくのも気にせずに息が切れるまで走り抜けた。心の中ではどうしてあんなことをしてしまったのだろうという自己嫌悪でいっぱいだった。
 家に帰るとただいまを言うより先に洗面所に向い、蛇口を思い切りひねってうがいを繰り返しした。母親はそんな茜を見て驚いていた様子で、口にはまだ美樹本のペニスが入っているような感覚があって、そんなことを両親に相談できるはずがなかった。仲の良い友達にも話していない。だからいまもそのことを思い出すと茜の口からは鉛のように重いため息が無意識に出てしまうのだ。
「しっかりしなさい、茜」と両手で自分の顔を叩いてハッパをかけた。キャプテンに交代を告げられコートに戻る。
 バスケットは20分間走り続けるスポーツだ。それだけにスタミナの消耗が激しく、とくにエース格の選手はパスが集まるので運動量が多い。途中ベンチに下がって体力を温存させる必要がある。そういったベンチワークも試合での勝敗を大きく左右するのだ。
 コートに入るとすぐに茜にパスが回ってきた。ポジションはフォワードだが、小学生の頃からバスケをしていることもありボール運びを仕事とするポイントガードまでこなせる。中学校まではジャンプ力を買われてセンターを務めることもあったが、高校に入ってからはさすがになくなった。高校には170センチを超える長身の女子がいるし、茜ほどテクニックのある選手をセンターに固定しておくのは勿体ないという戦術的意図があったからだ。茜には相手の動きを見極めるだけの経験と俊敏性、地道な努力によって積み上げられたシュート力があった。
 パスを受けると無意識に近い感覚で床にボールを弾ませる。左手の人差し指を体育館の天井に向けて立てて「この一本決めるよー」と大きな声を出した。腰の高い歩くだけのドリブルでゆっくりと進んで、フロントコート手前で待ち構えているディフェンスをわざとおびき寄せる。相手がカットしようと手を伸ばした瞬間、ボールをスルリと背中に通して左手に持ち替える。腰を落としたドリブルに切り替えスピードを一気に上げて抜き去った。チェンジオブスピードだ。
 そのままのスピードでフロントコートを突き進む。進路を塞ごうとするディフェンスを視線のフェイクで惑わさせ、流れるようなターンで鮮やかに置き去りにする。スピンターンという高等テクニックだ。
 フリースローライン手前まで切れ込んでストップモーションから空中で静止するような打点の高いジャンプシュートを放った。

 ポニーテールと黄色いリボンが揺れる。緩やかな重力の軌道をたどったボールは、まるで空中に数学の授業で習う二次関数の曲線を描くように綺麗にリングをくぐった。ネットを揺らすパサッという乾いた音がして、茜は「やったー!」と元気に飛び跳ねた。近くにいた先輩とハイタッチをする。
「また腕を上げたわね」
「たまたまです。あんなにうまくスピンターンが決まったのはじめてだし」
「それでもすごいわ。あれはちょっと止められないわよ。まるでビデオのお手本みたいだったもの。もう補欠組みには茜を止めれそうもないわね」
「えへへへ。次はスリーポイントでも狙ってみようかな」
「あらあら。さっそく天狗になってる。でもそれは武器になるわね。うちはいいシューターがいないから。あといまの場面はフリーの選手が横にいたからパスも選択肢に考えないとダメよ。そういう積み重ねが後々のフェイントにもなるわ」
「はい。あ、ディフェンスに戻らなきゃ。オフェンスはディフェンスからですよね、先輩」
「そうよ。県大会が近いからみんな本気よ」
 自陣にダッシュで戻る。スリーポイントラインの右内側辺りに足を止め、両手を広げてガードした。システムはゾーンディフェンスだ。腰を低く落として構える。離れた位置で相手となるフォワードの動きに注意を払った。
 相手ポイントガードは攻めあぐねたようにボールを弾ませるだけのドリブルで様子をうかがい、さかんに目を動かしてパスのポイントを探していた。ゴール下では熾烈なポジションの争いの真っ最中だ。レギュラー組みと補欠組みの女子同士で押し合いへし合いパワープレイのつばぜり合いを繰り返す。
 センターの少女(茜よりも背の高い3年生)が「ハイ! こっち!!」と手を伸ばす。すり足にあとずさり、腰で押して体を狭いゴール下のスペースにねじ込もうとする。少しでもゴールに近い絶好のシュートポジションを奪おうとしているのだ。ちょうどすし詰め状態になった満員電車に後ろ向きで強引に乗り込もうとする状況と同じと言える。
 一方、ディフェンス側は押し込まれまいと落とした足腰で床に踏ん張り、審判の見えない所では手で押したり密着して動きを封じたり、体ごとブルマーを(腰をねじ込もうとするのでどうしてもそうなる)押しつけてくる攻撃陣に対してシュートポジションを奪われまいと地道に抵抗する。
 本来バスケットは体のぶつかり合いを禁じたスポーツだったが、時代と共に発展するうちにこうしたぶつかり合いなしには勝てないスポーツへと変わっていったのだ。他校との試合ではユニフォームを引っ張られるのはよくあることだし、足を踏まれたり腕を掴まれたりさらには髪を引っ張られたりすることまである。それだけに練習だからといって手を抜くことはできないし、そうでなくとも補欠組みにとっては数少ないレギュラーの座を奪うチャンスなのだから真剣になるなというほうが無理な注文だ。
 いつまでたってもパスの出しどころを見つけられないポイントガードにしびれを切らしたフォワードがスリーポイントラインの外側まで下がってパスを要求する。強引なドリブルで茜のほうへ突っ込んできた。
「いくわよっ、茜!」
「抜かせないんだからっ!」
 気合い十分に待ち構える、茜。直後にハッとした。ドリブルをする相手フォワードのうしろ、風通しのために開かれた扉の影に良美の姿が見えたのだ。まるで真冬のつららのような視線で茜を見つめていた。次の瞬間「あぶない!」と叫ぶ声が聞こえて、茜はものすごい勢いで後方に弾き飛ばされた。
「大丈夫? 茜」
 部員が駆け寄ってくる。茜は足を押さえてうずくまった。
「ごめんね。焦ったみたい」
「いえ。わたしの不注意です。ちょっと気を取られてたから」
「ねえ、練習中に気を散らすなんて茜らしくないわよ。うまく集中できてないんじゃない? さっきも考え事してたみたいだし、足は大丈夫?」
「だ、大丈夫です。軽くひねっただけですから」
 顔をしかめてぎこちない作り笑いをする。チラリと出入り口付近に視線を走らせた。良美の姿はすでに消えていた。
「なにが大丈夫よ。すごく痛そうな顔してるじゃない。まさか骨折?」
 部員たちの間にざわめきが走る。

「オラ! ジャマだドケッ!」
 背後からいかつい声がした。取り囲んでいた部員たちの垣根が崩れ、臨時顧問の磯貝がそこに割って入る。緑色のジャージ姿に、手には竹刀を持っている。先ほどまでコート横のパイプ椅子にふんぞり返ってタバコを吹かし、元気にコートを駆けまわる女子生徒のお尻や太腿を舐めるように眺めていたのだ。
 磯貝はタバコを咥えたまましゃがむと茜の足首に触れた。茜は「いたっ」と顔を歪めた。
「骨に異常はなさそうだなあ。軽い捻挫か」とブルドックのようなあごに手をやる。部員たちの間から安堵の声がもれた。みんなムードメーカーでもある茜のことを心から心配しているのだ。
「オマエラ、なにボサッとしてやがる」
 磯貝は周りに集まっている部員たちをギョロリと睨みつける。「まだ練習中だろ!」と怒鳴り散らすと、うずくまる茜を肩で支えるように立ち上がらせ「練習を続けろ。手を抜くなよ。手を抜いたヤツは腕立て100回だ」とすご味をきかせた。
「オラ、もう少しだぜぇ。あそこで休ませてやる」
 痛みに顔をしかめ、ひょこひょことしか歩けない茜を肩で支え、コートから離れた体育館の隅へと連れて行く。転がっていたバスケットボールをサンダルで蹴って床に寝かせた。木製の登り梯子と非常用の緑色のランプがあって、横にはバスケットボールの入ったカゴが視界を遮るように置かれていた。まるでそこだけ体育館から切り離され遮断された別の空間のように静かで、ことさら人目につきにくくなっていた。
「ここならいいだろ。練習の邪魔にもならないからな。まず怪我の場所をよく見せてみろ」
 サンダルでタバコを踏み消した。茜のバスケットシューズを脱がせ、ひねったほうの足首を軽く動かす。
「どうだ」
「少し痛いです」
 茜はわずかに顔をしかめた。
「1人で立てそうか」
 そう言われ茜は壁に片手を着いてどうにか起き上がった。ひねった脚側の膝を曲げてひょこひょことする。床に足先をつけるとスリ傷をお湯に浸したような鈍い痛みがあった。

「医者に行くほどのことはなさそうだなあ。まあ、走るのは無理ってところか。2、3日湿布でもしてれば治るだろ」
「ありがとう…ございます……」
 ほっと胸をなでおろした。茜にとっても間近に迫った県大会はどうしても出場したい大会なのだ。その眼下では、しゃがんだままの磯貝が茜のムッチリとした健康的な下半身をブルマーを中心にいまにも触れそうな様子でジロジロと眺めていた。
「ついでだ、他のところもみといてやろう」
 ギョロリとさせた目で唾を飲み込む。
「倒れたときにケツを打ってただろう。オレ様のところまですごい音が聞こえたからな」
 節くれた太い指で白いハイソックスに触れた。スルリとしなやかなスネと脹脛に沿ってゆっくりと移動させる。すぐ目の前には汗ばんだムチリとした太腿と、ピッチリフィットしたブルマーに包まれた肉感的な下腹部がある。細いウエストから腰骨が横にパンと張り出していて、そこにとろけそうな肉質の肌が筋肉に引き締まってまとわりついている。緩やかな凹凸が若さにはちきれそうで、恥骨から内腿までムチムチでパンパンに発達している。これがまだ性器にチョロチョロとしか毛の生えていない小学生や中学生の女子だとブルマーもぶかぶかとしていてお尻や脚もまだ硬そうで子供すぎるし、女子大生やOLは逆にムチムチとし過ぎていて性的にも肉体的にも精神的にも完熟していて、見ることすらタブー的な神聖さや恥じらいやどこかあやふやとした無邪気さが悲しくなるほどに削ぎ落とされて失われ、無条件で無防備にそしてときとして犯罪的な危うさで男を魅了する禁断の甘い果実のような色気がない。
 茜にはそれが、見る者を魅了する可憐な純真さとそこに立っているだけで男子を惑わす健康的で早熟な肉体という奇妙なアンバランスさで備わっている。無邪気でありながら豊潤なプロポーションの肉体からは、茜本人の意識とは別に周りにいる男子や男性を静かに欲情させるような(それはまるで冷蔵庫の一番奥で赤く燃える炎のようでもあった)目に見えない色香がムンムンと溢れているのだ。
 紺色をしたヴィーナスの丘がポリエステル生地で縛られてふっくらとして形をあらわし、清純な仕草や顔立ちにとは裏腹に茜は土手高のモリマンだった。横から眺めるとスッと切れ込んだ太腿のラインから恥骨付近だけが文字通り肉土手のように立体的にこんもりとして、薄くスリットの陰影が浮き上がっていた。もちろんそのことに茜は気づいていない。
「ここはどうだ」
 磯貝は茜を壁に片手を着いて立たせたまま下腿三頭筋群の浮き上がった脹脛に触れた。ハイソックスの表面を筋肉の束に沿って親指で押し込む。茜は横向きに体を支え、心配そうに磯貝の指圧行為を見下ろしていた。
「そこは痛くありません」
「そうか。膝はどうだ。バスケは膝が命だからな。膝を痛めたら選手生命にかかわるぞ」
 膝を曲げさせる。体を支える磯貝の手がブルマーの側面に当たった。茜はわずかに眉をひそめた。
「あの、先生……手が……」
 嫌悪感の滲んだ視線を注ぐ。茜は実のところこの磯貝という男性教師があまり好きではなかった。本来女子バスケ部の顧問は若くて優しい女性教師だったが、その教師が産休に入ったためちょうど手の空いていた磯貝が臨時顧問としてやってきたのだ。噂では叔父であるPTA会長に頼み込んで圧力をかけさせ、他の候補を押しのけて顧問の椅子を奪い取ったという話しだった。茜以外の部員も磯貝を毛嫌いしているし、青葉台高校の生徒で磯貝を尊敬している生徒など1人もいない。
 茜の声を耳にした磯貝は不機嫌そうに顔を上げ「オレ様の手がどうしたあ。なにか文句あるのかあ」と白い目で睨んだ。
「文句があるならハッキリ言ってみろ」
「いえ。なんでもありません」
「あたり前だ。いいか、森下。オレ様は顧問だ。顧問ってのはな、部員の安全や健康を管理する義務ってのがあるんだよ。たとえオレ様の気に食わないヤツでもなあ。もしものときになって責任を取らされるこっちの身になってみろってぇんだ。クビになったらオマンマの食いっぱぐれだぜぇ。それともなにか、そうなったら森下が責任取ってくれるのか?」
 茜は表情を曇らせる。しまったと思っていた。踏んではいけない地雷を踏んでしまったのだ。こうなると磯貝は畳み掛けるように生徒をいたぶる。
「偉そうな口を叩きやがって。優等生ってぇのはそんなにお偉い立場か。2年でレギュラーだとか浮かれてるんじゃないだろうなぁ。オレ様がその気になれば明日にでも補欠になるんだぜぇ。オマエだってヒーハー汗タラタラに練習してベンチで見学なんてしたくねぇだろ。もうすぐ県大会なのになぁ。この意味がわかるか。わかったら返事しろ」
「はい……わかりました……」
 しぶしぶ返事をした。しゃがんでいる磯貝の手が背後に回りこんでブルマーに張りつき、茜のグッとした尻肉を掴んで緩く揉み込みはじめた。
「だいたいがだ。ケツにちょっと手があたったぐらいでギャーギャー騒ぐヤツがあるか。教師に対する態度がなってねえんじゃねえか。思春期だか知らねえが意識しすぎなんだよ。とくに森下は男子の人気があるからってヘラヘラしてるところがあるからなぁ。オレはそういうのが見てて一番ムカムカしてくる」
「わたし、ヘラヘラなんてしてません」
「うるせぇ! そのすぐ口ごたえする態度が気にくわねぇって言ってるんだ。オマエはハイだけ言ってオレ様の命令に従ってろっ。それともなにか、生徒の分際でオレ様にたてつくつもりか。臨時顧問だからってなめるんじゃねえぞ。いいか、オレ様が監督だ。そのオレ様に逆らうってことは退部する覚悟があるってことだろうな、森下」
 まるでチンピラまがいの恫喝だ。茜は怯えた表情で「すみませんでした」と謝った。すぐに「先生を不快な気持ちにさせたのなら謝ります」と言った。勝ち気ではあるが真面目な茜にはもともと教師に逆らうという意思はほとんどない。
「最初から素直にそうしてりゃいいんだよ。あんまりオレ様を怒らせるなよ」
 シュンとした茜の態度に磯貝はニンマリとし、手でムチッとしたヒップラインをなぞって触る。白いラインの入ったブルマーの腰元に這わせ、見上げ加減に茜の様子を観察している。
「どうもこの辺が悪そうだな。両手を壁に着いて後ろ向け」
「でも」
「でもじゃねぇ。聞こえなかったのか」
「す、すみません」
 茜は痛めた足をかばいながら体育館の壁に両手を着いて磯貝に背中を向けた。フワリとした前髪が壁に触れる。瞳の先には渦状をした木目があって、茜はその木目を数えるように見つめた。ゾゾゾッとして左右の太腿裏を磯貝の手が掴む感触があった。
「いいか、これは診察だからな。へんな誤解をするんじゃねえぞ」
 しつこいぐらい念押しする。
「まるでモデルみたいな脚だな。肌も白くてスベスベしてやがる。バスケ部やバレー部はとくにケツのデカイヤツが多いがその中でもとびっきりだな。ムチムチで見てるだけでむしゃぶりつきたくなるようなケツだぜ」
「そんな言い方って」
「動くな。動いたらこのデカケツを椅子に座れなくなるまでぶっ叩いてやるかな」
「っ……」
 白ムチの太腿裏をデリケートになぞる。一応のマッサージらしきことをしてはいるが、ねっちりとしていやらしくどう考えてもただの診察とは思えない手つきだ。どちらかというとセクハラか痴漢に近いそれだ。
「もっとこうやってケツを突き出せ」
「ひやぁ」
 手で膝を肩幅ほどに開かされ、するのも恥ずかしいガニ股の格好にさせられた。腰を後方に引っ張られてブルマーの後ろ、肉厚に盛り上がった臀部の狭間になにかが押し当てられる。それが磯貝の鼻先だと茜が気づくのにそれほど時間はいらなかった。クンクンと犬が鼻面をすりつけるように動いたのだ。
「いや。こんなのひどい!」
「いいからじっとしてろ。匂い検査だ」
「せ、先生、匂い検査なんてしないでください。そんなところ嗅がないでください」
「どうしてだ」
「恥ずかしいし、どうしてもです」
 あまりのおぞましさに身震いする。逃げようとして痛めた足首に鈍痛が生じた。周囲に視線を走らせ、大声を上げようとして茜はためらいを感じた。この事が騒ぎとなれば、女子バスケ部が出場停止や部活動停止になるといった可能性はないだろうか。今度の大会は3年生にとって最後の大会になるのだ。先輩のためにもそれだけはなんとしても避けなければならない。
 さりげなくコートに視線を向けてキャプテンか部員のだれかに助けを求めようとしたが、ボールの入ったカゴがまるでついたてのように邪魔をして視界や物音さえも遮っている。高い位置にある窓からはまだ明るい光が射し込み、放課後の体育館の賑わいが茜の耳にはやけに遠くに感じられた。下唇を噛んで壁に汗ばんだ額を押し付け、茜は短く切り揃えた爪を立てた。
「すっぱい匂いがするぜ」
 磯貝は茜の後ろにしゃがんで腰を押さえ、濃紺のブルマーに顔を埋めている。ちょうど茜のブルマーに磯貝の顔が合致した格好だ。極上の弾力でムチムチと揺れて押し返す。
「汗を吸ったブルマの匂いだぜ。いっちょまえにオマンコの匂いまでしてやがる。正真正銘バージンの匂いだ。どうだ、当たりだろ?」
「な、なにをっ。ヘンなことを言わないでください」
「なにがヘンなことだ。オレ様ぐらいになるとなあ、匂いでわかるんだよ」
「くっ……!」
「真面目な森下は自分が処女とは口が裂けても言いたくないわけか。さすがは優等生だぜぇ。まだ男を知らない青臭いバージンマンコの匂いが男を誘ってプンプンだ」
 顔を押しつけたままグヘヘヘと薄気味悪く笑う。プリプリとしてはちきれそうなポリエステル繊維の表面にしつこく頬擦りして、濃紺色の学校一豊かな肉尻を我が物顔で触る。つややかなポニーテールの髪先のかかる茜の肩が微かに震えた。
「まだ男はいないだろうなあ。ミス青葉台のオマエに男がいるとなると大事件だぜぇ。いるのか?」
「い、いません」
「そうか。なに、こんなお色気ムンムンの体は男にとって毒だからなあ。すぐに部屋に連れ込まれて手を出されるのがオチだぜぇ。これは監督命令だ。高校の間は男は作るな。どうしても男がほしい場合はオレ様に報告しろ。オレ様が恋人になってやる。わかったか」
「っっ……どうして、そんなことまで。理不尽です」
「おいおい、いきなり命令違反か。部員は監督命令に絶対服従だったよなあ」
「いくら監督でもひどいと思います」
「ひどいかどうか判断するのもオレ様だ。まさかもう好きな男でもいるんじゃないだろうな」
「もし好きな男子がいたとしても先生には関係ありません」
「関係ないもんか。男なんか作ってみろ、デートだ電話だ、学校の成績は落ちるし練習だって身が入らなくなる」
「わたし練習だって勉強だっていままで通り頑張ります」
「口ではなんとでも言えるからなあ。森下はバスケが好きだよなあ。試合に出たいだろ」
「もちろん出たい…です……」
「下手に逆らうと損するぜぇ」
「どういう意味ですか」
 茜は怪訝に眉をひそめた。
「どうもこうもねえ。オレ様は監督だ。それに逆らうとなるとレギュラー剥奪どころか部を辞めてもらうことになるかもしれないって意味だ。そうなれば内申書だって響くだろうな」
「ひどい。横暴です」
「ゲスの勘ぐりはするな。これはオレ様からの優しい忠告だぜ。オマエだって部に波風を立ててまで辞めたくはないだろ」
 クンクンと匂いを嗅ぐだけでなく、ブルマーのクロッチにぶっちゅりキスまでしはじめている。
 なにが優しい忠告だ。あきらかに脅しではないか。茜はひどく暗い気持ちになった。どうしてこんな卑劣な男が青葉台高校で教師などしていられるのだろう。同じ地域に住んで同じ空の下で同じ空気を吸っていると思うだけでも寒気がしてくる。こみ上げてくる非難したい気持ちをぐっと抑えた。静かな口調で「わかりました……」とだけ答えた。悔しいがいまは耐えて、一秒でも早くこのいやらしい行為が終わることを願うしかない。
「それでいいぜぇ。女は素直さが一番だ」
「…………」
「だがそうすると森下も色々と寂しいだろう。なにせこれだけのお色気ムンムンの体を持て余すことになるわけだからな」
「別に持て余してなんて……」
「どうだ、今度個人練習でもしてやろう」
「個人練習?」
「そうだ。どうも森下は口先だけのところがあるみたいだからな。そのねじくれた根性をオレ様が叩き直してやる」
「いいです。遠慮します。わたし先生に個人練習なんて見てもらわなくてもみんなとちゃんと練習します」
 茜は即座に断りを入れた。磯貝と個人練習などとんでもない話だ。なにをされるかわかった物ではない。
「遠慮するな。オレ様はスパルタだがな、一日中みっちり鍛えてやるぜ。バスケ以外も色々とな」
 ブルマーの生地を掴んで食い込ませる。プリリンとしたとろみのある尻肉が迫力たっぷりにこぼれ、若さで弾けるようにグンと盛り上がりムチムチと揺れる。いわゆるブルマーならではのハミケツだ。男なら磯貝でなくともむしゃぶりつきたくなる。その表面をペチペチ叩いた。
「筋肉の締まり具合が絶妙だな。肉づきのいい太腿までプリプリしてやがる。まさに絶品だぜぇ、森下のケツは。学校はじまって以来の美人は学校一のいやらしい牝尻の持ち主ってか。ホント最高のブルマ尻だ。これだけエロイと電車の中で触られたことがあるんじゃないのか。どうだ、痴漢されたことがあるんだろ」
「し、知りません」
「バカかオマエ。自分のことを知らないヤツがあるか」
「言う必要なんてないし」
「そうか。答えたくないってことはされた経験があるってことだな」
「どうしてそうなるんですか」
「森下はセーラー服もお似合いだからな。満員電車じゃスケベなサラリーマンの標的にされて当然ってわけだ。まさか中年のサラリーマンにバージンのアソコを触られて電車の中でアンアン感じたわけじゃないだろうな」
「そんなことありません」
「あやしいぜぇ」
 磯貝の指がブルマーの真ん中をスリリッとなぞる。もはや鳥肌どころのレベルではない。茜はたまらず体を揺らして「そんなところ、触らないでください」と言った。
「バージンのオマンコが疼くか」
「ち、違います。変なこと言わないでください!」
 冷や汗混じりにきつく否定する。腰を使ってクナクナと嫌悪した。いまや磯貝は背後から被さるように抱きついてきて、ブルマーの裏側にジャージの前を押しつけている。回り込ませた右手を使ってブルマーのクロッチをスリスリと左手で体操シャツの胸をヤワヤワと揉むのだ。
「こうやって痴漢されたことがあるんだろ」
「やめてください。おかしいです」
「正直に白状しろ、痴漢されて感じたことがありますってな」
「言えません、そんなの絶対」
 痛めた足をかばいながら泣きそうな気持ちの、茜。脚を広げて踏ん張って、壁に着いた両手とのバランスでどうにか体重を支え、黄色いリボンとポニーテールを弱々しく動かす。フワリとした前髪さえも恥じらいに震えている。そうやって体操シャツの胸を揉まれ、ブルマーの上から大事な場所を触られていると、相手が毛嫌いしている磯貝であるにもかかわらず茜の体からは生気を吸い取られるように急激に力が抜けていった。
「痴漢マニアにはたまらんだろうな。なんせこの顔でこの体だからな。捕まる危険を犯しても触りたくなるんだぜぇ。どうだ、腰が重くなってくるだろう」
 耳に粘りつくようなねちっこい声だ。下唇を噛んで苦しげに耐えている茜の横顔を覗き込んで、体操シャツの胸を強弱をつけて揉んで、ブルマーの股間の摩擦具合を早めたり遅めたりと微調節する。
 茜はあごを下げて呼吸を足下に向けて吐いて、苦しい声で「し、知りません」と再び答えた。
「お願いですからやめてください。みんなに言いませんから」
 声がうわずる。ブルマーの後方に硬い物がグリグリと押し付けられ、軽く小突いたりもする。それがひどく恐ろしく感じられ、茜の意識は朦朧とその部分に集中してしまう。自分のお尻の穴がヒクつくような感じがした。
「なにが偉そうに『みんなには言いません』だ。生徒のくせにオレ様に忠告する気か」
 胸を強く掴まれ、腰が崩れかける。白いハイソックスの膝がガクガクとしてきて、少しでも気を抜けばそのまま折れてしまいそうだ。
「ダメ、お願いです。やめてください、先生」
「そうやって強がっていられるのもいまのうちだ」
「学校や他の先生に言いますよ、わたし」
「なにをだ。これは監督としての部員に対する正等な診察行為だぜぇ」
「ウソです。こんなの普通じゃありません」
「教師と生徒、どちらの言い分を信じるかな。どちらにしても女子バスケ部は大変なことになるだろうな。それでもいいのか、森下は」
「卑怯です。そんなの」
「おい。言葉に気をつけろよ。それよりオレ様に任せてみろ。そのほうが楽になれるぜぇ」
 ふさふさの毛が生えたうなじをネトネトに舐め、耳の裏側をしゃぶる。指をスリスリ早く動かして連続で摩擦し、まるで茜の体に火を起こそうとするような動きだ。磯貝のジャージの前はいまや完全に茜のブルマーに背後からグリグリ密着している。
「い、いやぁ……こんなのひどい……」
 茜は腰を斜めによじって高さをずらし懸命に抵抗を続ける。首をイヤイヤと振って、ポニーテールとリボンを揺らす。短い爪の先をカリカリと音をさせ、本当に腰がもったりとして重くなり、下腹部の奥でなにかが燃えるように熱くなりはじめた。額に生汗を浮かばせる。呼吸が荒くなって、しつこく揉まれている胸の先が痛いぐらいにジンジンとした。
「どうだ。そこの体育倉庫に行くか」と磯貝が言った。あごを動かす。
 その先には頑丈な鉄の扉をした倉庫があって、そこにはバレーボールやバスケットボール、跳び箱に体操マット、バレーコートのネットにバトミントンや体操の道具など、たまの授業でしか使われない運動器具や測定器具などがしまわれている。まるで地下室のように暗くてジメジメとしていてとても埃っぽい密室だ。扉が扉だけに音が外にもれることはないし、一旦内側から鍵をかけてしまえば人が入ってくることもない。もしそんなところに連れ込まれでもしたらどんなことになってしまうだろうか。そう考えただけで茜はゾッとした。
「もう終わりにしてください」
 ポニーテールとリボンを振って腰を大きくくねらせる。
「練習に戻ります」
「寝言を言うなよ、その足で練習なんかできるわけがないだろ。練習の邪魔になるだけだ」
「記録とか声だしとかみんなとできます」
 なおも逃げようと茜は体をよじって動かす。磯貝はそんな茜の首根っこを押さえつけて「声を出すな」とドスのきいた低い声で脅した。
「この恥ずかしい姿を見られることになるぜぇ」
 まるでこれまでにもそうやって女子生徒を脅したことがあるような口ぶりだ。茜は顔色を真っ青に変えて、滝のような冷や汗を流した。
「なぁにすぐに終わる。もうすぐオマエの腰が抜けるからな。そうなったらあそこに連れ込んで処女をぶち抜いてやる」
「そんなのやめて。絶対にいやです」
「心配するな。痛くないようにしてやる。だれだっていつかは経験するからなあ。オマエの大好きな友達や先輩だってそうやって来たんだ。それにオマエだって感じてるんだろうが。森下のオマンコは早くバージンをハメてくださいって泣いてるぜぇ」
「ウソ、そんなの! 泣いてなんていません!」
 首を押さえつけている磯貝の腕を引き剥がそうと掴み返して腰をよじって抵抗する。そうして腰をもじつかせて動かしていると、無防備になったブルマーの裏側に硬い物が繰り返し右に左にこすれて当たって、抵抗すればするほど精神的に興奮していることもあり茜はだんだんとおかしな気分になっていった。まるで逃れようとしている自分が、磯貝のジャージにブルマーをこすりつけているようなひどく淫猥でひどく屈折した気持ちだ。回り込んだ磯貝の手はまるで吸いつくようにブルマーの土手全体をズリズリ前後に摩擦して、クリトリスの辺りを適確にコネコネと転がす。
「ぅぅ……そ、そこはやめて……」
 脱水症状のように喉が渇いて頭がクラクラと軽いめまいがした。そういえば先ほどまでコートで元気に動き回って練習していたのだ。水分補給をしていないのだからそうなってもおかしくない。それは同時に茜にとって致命的なピンチを物語る。
「どうだ。オマンコがすごく熱くなってきただろ。感じてる証拠だぜ。クチュクチュいやらしい音がしてやがる。わかるだろ、濡れてるのがよ。森下もハメハメの味を覚えればオレ様に処女をヤラれて良かったと思えるようになるぜ。高校生だ、そういうのに興味がないわけじゃないだろ」
「そ、そんな興味ありません、はぅっ」
「オマエは教員にも人気があるからな。処女を頂いたとなれば酒の席で自慢になるぜ。気のあるヤツら歯軋りして悔しがるに違いない。もうすぐだ。もうすぐ腰が抜けるぞ。そうなったらすぐに連れ込んでハメてやるからな。せっかくだ、ブルマのままバックで犯してやる。このデカケツを時間をかけてたっぷり犬みたいに後ろから犯してやる」
 茜の微妙な変化を察知した磯貝は、ここが責め時だとばかりに体に力が入らず腰が抜けかけていびつなガニ股をするようなブルマー尻に向けてガンガンとジャージの股間をぶつけはじめた。「どうだ、これが立ちバックハメだ。勉強になるだろ」とブルマーのクロッチに狙いを定め連打する。
「ああっ、やめてください……あうっ、っっ……」
 茜はうなじまで赤く染めて湿っぽい声をもらす。それを聞いた磯貝はもう辛抱たまらんといった様子でブルマーに手をかけて、なし崩しの勢いで茜のバージンをバックハメしようとする。
「じっとしてろ。我慢すればレギュラーどころか来年のキャプテンはオマエに決まりだからな」
 スルスルと薄皮を剥ぐようにブルマーとショーツを半分ほど脱がして、くびれた腰元をガッチリと抱え込む。ジャージから我慢汁の滴るお仕置き棒を取り出し、ネットリと蒸れた茜の性器へピンポイントでセットした。大きな白桃のような臀部がビクリとやにわに揺れる。馴染ませ加減にヌチャヌチャと音をさせた。
「体育館での貫通式だ」
 満面の笑みで不気味な涎まで垂らして勝利を確信する。
 その磯貝の足下にどこからともなくバスケットボールが転がってきた。コロコロと転がり、サンダルに当たって止まる。
 磯貝はすぐさま茜の体から手を放した。竹刀を手に、ボールの転がってきた方向にギョロリと振り返った。だれもいなかった。だれもいない場所からボールは転がってきたのだ。
 さすがの磯貝もこれには冷や汗をかいた。慌てて茜のブルマーを元通りにさせ「運のいい野郎だ」と吐き捨てた。
 ボールを力任せに蹴り飛ばす。竹刀で床を叩いた。「今日はこの辺にしといてやる。わかってるだろうな。よけいなことはしゃべるなよ。しゃべればオマエの大事なバスケ部をめちゃくちゃにしてやるからな!」とすご味をきかせその場から離れていった。

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