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茜 Lost Virgin
作者:ブルー
公開
06. ドライブ
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6/14

 青葉台高校の生徒がよく立ち寄るコンビニエンスストアや本屋の並んだポプラ並木を茜が1人で歩いていると1台の車が横に近づいてきた。大きな魚の目のようなヘッドライトをしたスポーツカーだった。流線型のボディーが金属独特の光沢によってメタリックに輝いている。パワーウィンドウがなめらかに下りる。運転席には美樹本が座っていた。
「やあ」と美樹本は言った。爽やかに笑って白い歯を見せる。
 茜は立ち止まって黒い瞳をしばたかせ、すぐに驚きから警戒に表情を変えた。「どうしたんですか」と怪訝に尋ねた。辺りを気にする。放課後を迎えたばかりの通学路には下校途中の生徒がたくさんいた。
「たまたま通りかかってね。せっかくだし乗りなよ。家まで送ってあげるからさ」
 腕を伸ばして助手席側のドアを開けようとする。
「いえ、いいです」と茜はきっぱりと言った。そっけない態度で学生鞄を両手で持って足をかばう仕草も見せずにスタスタと歩きはじめた。
「おいおい。つれないなー」と美樹本はゆっくりと車を走らせる。重く静かなエンジン音が響いた。
「足、怪我したんだって? 良美ちゃんに聞いたよ。無理はよくないんじゃないかな」
 茜はピタリと立ち止まった。
「良美と話したんですか」と表情を窺うように尋ねた。部室での秘密を知られていないか不安になったのだ。美樹本の顔に変化はなかった。ハンドルに片手を置いて栗毛色の前髪をかきあげ「電話でね」とサラリと話していた。
「それだけ、ですか?」
「他になにか気になることでもあるのかい」
「いえ。良美、学校を休んでるんです。今日も」
 唇を真っ直ぐに表情を引き締め、凛とした姿勢で前を向いて歩きはじめる。茜が歩くと黒髪のポニーテールが規則正しいメトロノームのように左右に揺れた。
「……風邪でもひいたかな。元気そうだったけどね。そういう横顔もすごく可愛いね。まるでギリシャ神話のアテナみたいだ。アクロポリスって知ってるだろ? クレタ島に行ったことはあるかい? いいところだよ、クレタ島は。気候がとても穏やかでね。ペペロンチーノとピッツアがとても美味しい。薄い生地に赤いトマトとモッツァレラチーズと絞りたてのオリーブオイルをかけただけのシンプルなピッツアだよ」と美樹本は言った。茜は無言のまま通学路を歩いている。
「あれ、そういうのには興味がないかな。そうだ。今度サークルのイベントがあるんだけど良かったら来てみないかい? クラブを借り切ってさ、選りすぐりの可愛い子だけを集めて踊るダンスパーティー&ミスコンみたいなものだよ。ダンスとか好きだろ? 本当は高校生はダメなんだけど茜ちゃんは特別さ、ダンスクイーン間違いなしだしね」
 茜はチラリと視線を投げかけ、うんざりとするようにため息をついた。
「あの、お願いだからついて来ないでください。……みんなに見られたりとかしたらすごく困るんです」
「どうして困るのかな。僕は話しかけてるだけだよ」
「どうしてもです。それにもうわたし美樹本さんとは関わりたくないんです」
「関わりたくない? あ、もしかしてこの前のこと気にしてるのかい。僕にフェラチオしてくれたこと」
 思わず絶句して表情を強張らせた。逃げるように歩みを速めた。
「そんなに気にしてるのかい、フェラチオを。あんなのみんなしてることだよ。高校生なんだし、茜ちゃんの友達にもセックスしてる子とかいっぱいいるだろ? そういうの教室で話したりしない? おい、待ってくれよ、茜ちゃん。茜ちゃんってば。すごく新鮮でキュートだったよ、茜ちゃんのフェラチオ」
 ノロノロと追いかけて、ついにはクラクションまで鳴らす。茜はたまらず不快な表情で睨んだ。「いいかげんにしてください」と声をひそめて言った。
「茜ちゃんが乗ってくれたらやめるさ。ドライブぐらいいいだろ、知らない間じゃないんだし」
「乗りません。車とかあんまり好きじゃないんです。あとヘンな言葉使うのやめてください」
 茜は通学路を駅に向ってひたすら歩く。その横を美樹本の運転する車は尾行するように併走する。
「フェラチオとかセックスのことかい?」
「もう知りません!」
「ハハハ。茜ちゃんはほんとピュアだな」
「ピュアとかそういうのじゃなくても常識的におかしいと思います。お願いだからついて来ないでください」
「そうはいかないよ。どうやら茜ちゃんのことが好きになったみたいなんだ、僕は」
「わたしは美樹本さんみたいな人タイプじゃありません」
「ハッキリだな。そういうストレートなところもグッとくるね。それより乗りなよ。みんな見てるよ」
 そう言われて立ち止まり、茜は辺りを見回した。青葉台高校の生徒が茜を見てなにやらヒソヒソと話していた。中にはクラスメイトの顔もあった。
「ほらね、だから言っただろ」
 ハンドルを握ったまま肩をすくめる。
「美樹本さんがついて来るからです」
「まいったな。そう言われると反論のしようがないよ。どちらにしてもこのまま駅まで歩くのはまずいんじゃないかな」
 助手席のドアを開けた。「乗りなよ」と茜を助手席のシートに誘う。
 歩道の茜は不安げな表情でシートに目をやり、両手で学生鞄を持って考えていた。排気ガスを撒き散らす配送のトラックが美樹本の車の横を邪魔そうにすり抜けた。
「そうやってグズグズしてるとますます目立つだけだと思うけどね。まさかドライブは校則違反じゃないよね」
 茜はしぶしぶ車に乗り込んだ。


 シルバーメタリックのスポーツカーはまるでアスファルトを這うように道路を進んだ。走行車線と追い越し車線を駆使して何台もの車を軽く抜き去る。風景は電車の車窓よりも速く流れたがスピード感はそれほどなかった。おそらくなめらかなシフトチェンジのせいだろう。
 車の中で美樹本は、夏の軽井沢でのペンションを借り切ってのテニス交流会や、冬の白馬でのスキー合宿、日本海へのドライブツアーにサークルメンバー全員でのサイパン旅行のことなど、およそ大学進学を控えた女子高生が夢見るであろう自由で開放的なキャンパスライフについて熱心に話しかけていた。サークルには国公立及び有名私立大学の学生のみが参加していて、活動は基本的に自由、中には芸能事務所に所属しているタレントやモデルの卵までが名を連ねている。イベントにはそういう業界関係者もよくやってくるし、実際イベントでスカウトされてそのまま芸能界にデビューした学生までいて、サークルのメンバーであればイベントの参加費用はすべてが無料になり、さらに大手広告代理店を筆頭とする大企業との太いパイプがあるため就職活動にも有利になるということだった。
 茜はそういう美樹本の話をすべて右から左に聞き流していた。揃えた膝に学生鞄を置いてスカートをしっかり押さえ、窓の外に流れる風景をただ眺めている。外には白い波が幾重にも打ち寄せる海岸線とコンクリートで作られた防波堤があって、車は茜の自宅のある地域に向けて走っていた。遠くに亀の背中ような小島が見えた。海に突き出した防波堤の先にある灯台の周りを白いカモメが旋回して飛んでいた。キラキラと午後の日の光を反射する海を眺めていると茜はいつまでも飽きることがなかった。
「でさ、どうかな。さっきの話考えてみてくれないかな」
 道路を右折して閑静な住宅街に入り、車は古い神社の林に沿って伸びる人気のない路地に止まった。助手席のドアのすぐ横には深緑の苔がびっしり生えた古い石垣がある。話のほとんどを聞いていなかった茜はキョトンとした表情で「なにがですか?」と聞き返した。
「聞いてなかったのかい。僕の彼女になってくれるかなって話だよ、茜ちゃんにその気があればの話だけど」
「わたしが美樹本さんの彼女??」
「そう、キミが僕の彼女」
「でも美樹本さんには良美が」と茜は言った。いつの間にそんな話になったのだろう。運転席の美樹本は真っ直ぐに茜を見つめていた。
「僕がこんなふうだから誤解されてるのかな。良美ちゃんとはなんでもないさ」
「ウソ」
「ウソじゃないよ」
「だってあんなに仲良く……良美だって美樹本さんのことすごく自慢してたし」
「友達として、だよ。なんなら本人に聞いてみるといい。ちゃんと彼氏だっているんだよ。僕の知り合いだけどね。それでフリーなんで紹介してもらったってわけさ、茜ちゃんを」
「良美に別に彼氏? 美樹本さんじゃなくて? そんな話聞いてません」
「聞いてなくても事実だよ。僕は茜ちゃんひとすじだからね」
「からかわないでください。まだ知りあったばかりですよ。美樹本さんならそういうの他にいい人がいるんじゃないんですか。それにわたしは――」
「小笠原くんのことが好き、だから他の男と付き合うとかは考えられない?」
 美樹本は片手をハンドルに置いてフロントガラスの向こうに目を向けていた。茜は真剣な表情で「はい」とうなずいた。
「やっぱりね。そうじゃないかと思ってたけどね」
「ごめんなさい」
「謝ることはないさ。悪いことをしたわけじゃないだろ」
「ええ」
「それにまだ正式に付き合ってるわけじゃないよね。茜ちゃんは好きかもしれないけど、その小笠原くんが茜ちゃんを選ぶとは限らない。人の心っていうのはとても複雑でとても移ろぎやすいものだ。90年代のヒットチャートよりもね。これは前も言ったかもしれないけど、もしかしたら別に好きな子がいるかもしれないし、茜ちゃんが知らないだけいまも隠れて付き合ってるかもしれない。だとしたらフリーってことになる」
「それは……そうかもしれないけど……」
「それとも小笠原くんが絶対に自分を選ぶっていう自信でもあるのかな? そうじゃないから茜ちゃん自身その先に踏み込むことができないでいる。高所恐怖症にかかった高飛び込みの選手みたいに。そうじゃない?」
「…………」
「ごめん。不安にさせるような言いかたして。ただそういう可能性が0じゃないってことを知っておいてほしかっただけなんだよ」
「たしかに美樹本さんの言う通りだと思います。彼ちょっとにぶいし、けっこう女の子から人気あるし……」
「高校って場所はネコも杓子も恋盛りの季節だからね。羨ましいよ、茜ちゃんみたいな可愛い子が同じ学校にいてさ。その彼も目移りしてると思うよ。情けない話男ってのはそういう生き物だしね。だから僕が彼氏に立候補するのを許してほしい。どうかな? 僕みたいな大学生をキープしてたら車の送り迎えとかも自由だし友達にだって自慢できると思わない? 僕もそこそこイケてるだろ?」
 美樹本はさも自嘲気味であるように白い歯を見せて笑った。右手で栗毛色の髪をかき上げる。
「キープとかって……そういうのやっぱりおかしいと思います」
 即座に断る。電信柱の影が車の中に倒れてきて、遠くで走る車の音が聞こえていた。路地の向こうからヨタヨタとした野良犬が歩いてきた。電信柱の匂いを一生懸命嗅いでいる。
「それに困ります」
「そんなふうに言われると悲しいな。僕は僕なりに茜ちゃんを愛しているんだよ。いくばくか軽薄に聞こえるかもしれないけどこの気持ちは真剣だし本気なんだ。困るっていうのはもしかしたら茜ちゃんの心が動きそうだから困るってことかな」
 美樹本の腕が動いた。茜の手をそっと握る。車内の温度が、2、3度下がった気がした。戸惑っている茜の指に1本1本触れ「茜ちゃんはもっと恋愛に前向きになったほうがいいんじゃないかな」と言った。
「わたしは別に普通に」
「それだよそれ。そうやってすぐに構える。試験や試合じゃないんだ。深く考える必要はないんだよ。人生経験のために付き合うってのもありだろ? いますぐ返事をくれって言ってるわけじゃないしね」
「人生経験って……」
「僕だけじゃなく、多くの人との出会いがこれからも色々あるわけだ。Experience、何事も経験だよ。恋愛も練習とか予習とか復習とかそういうのが大事だからね。とくに茜ちゃんは男女交際とか知らないことが多そうだ」
 うつむいている茜の表情を覗き込むように見つめ、広げさせた手の窪みでなぞるように指を動かした。間に沈黙を置いた。
「僕が立候補すること許してくれるよね?」
 セーラー服の裾から伸びる腕をさする。肩口からポニーテールの髪先に軽く触れた。
「もし付き合うことになったら色んなこと教えてあげられると思うし、経験することでそれまで見えてなかったことがたくさん見えてくると思うけどな。高校2年生なんて、控え目に言ってもまだ人生の入り口から歩きはじめたばかりじゃないか。視野を広げるのは決して悪いことじゃない。男と女のこととか」
 顔を近づけて首筋に暖かい息を吹きかける。うなじに触れた。それだけで茜はゾクゾクとする。「やめてください」と声を発して慌ててシートベルトのロックを外そうとした。美樹本はそんな茜の行動をあらかじめ予測していたかのように素早く押さえた。
「どうしたの、急に。まだ話の途中だよ」
「どういうつもりか知りませんけど、だれとも付き合う気なんてありませんから。帰ります。手を放してください」
「まあ、落ち着きなよ。それにこんなすぐ外に壁があったらドアなんて開けれないだろ」
「わざとこんなふうに止めたんですね。わたしがドアが開けれないように」
「さあね」
「はぐらかさないでください」
 眉をひそめて睨んだ。とりあえずシートベルトのロックを外そうとする。その茜の肩を美樹本の腕が助手席のシートに押さえつけた。
「手をどけて。車、動かしてください」
「それはできない、茜ちゃんのお願いでも」
「どうしてですか」
「さっきも言ったと思うけど、話の途中だからだよ」
「わたしはもう話すことなんてありません」
「まいったな。あんまり僕を困らせないでくれよ」
「どっちがですか」
「やれやれ。頑固だとは聞いてたけどここまでとは思ってなかったよ」
 強引に押し倒す。体を被せるようにしてシートに挟んでそのまま唇を奪う。「ンンッ! ウッーーーー!!」という茜の声が車内にこだました。
「ンンっ、ンムぅー!!」
「さっそく勉強になっただろ。女の子が男の車に乗るってことはさ、こういうことをされる可能性があるってことだよ」
 暴れだした茜の体を巧みにシートに押さえて動きを封じる。黒いプリーツスカートからスラリと伸びた脚に触れた。膝を開かせると見せかけて、白いハイソックスをくすぐる。
 茜は力のかぎり押し返し「なにをするんですか!」と慌てふためいて言った。「怒りますよ、わたし」と怒り心頭の表情と言葉で牽制する。きつい目つきで睨んで、狭い助手席にあってはシートベルトがひどく邪魔で脚をジタバタとさせるのがやっとだった。膝に置いてあった学生鞄が助手席の床に落ちた。
「少しぐらい僕にチャンスをくれてもいいだろ。茜ちゃんを振り向かせるチャンスをさ」
「そんなチャンスあげたくない」
「ショックなことを言わないでくれよ。泣きそうだよ。僕は茜ちゃんのことが好きなんだよ」
 スカートをめくって立体的に盛り上がったショーツに触れる。ヴィーナスの丘に指を滑らせた。茜は体中の危険信号を総動員してギュッと脚と脚を閉じ合わせ、光沢のあるパール色をした面積の大きなショーツを着用していた。デパートのランジェリーショップで買ったちょっと大人っぽく高級感のあるやつだ。
「いいからじっとしてなよ。この前だって感じてたんだろ」
 ヌルリと舌をねじ込んで口を塞ぐ。くびれたウエスト周りとなだらかな下腹部に触って、膝の内側に力をかけて脚を開かせようとした。
「さすが力があるな。レスリングとか習ってないよね。白い肌がすごく綺麗だよ」
 抵抗する茜の閉じ合わせた脚の力が尋常ではないと悟ると、先にパール色のショーツを脱がせるべく方針転換する。横に指を引っ掛け無理に下げる。暴れる茜がどうにも腰を浮かさないのでショーツは引き千切れそうになるまで伸びてしまう。ようやく膝のところまで下ろすと、美樹本はしっかりと横に張り出した腰のたおやかなラインに沿ってなぞって、首筋にキスをした。ムチムチに肉づいた太腿を触る。
「いやっ。やめてくださいっっ」
「筋肉がついててすごいムチムチしてるね」
「いい加減にして。警察に言います!」
「警察とは穏やかじゃないな。僕はただ茜ちゃんに僕の気持ちを知ってほしいだけなんだよ。フェアにね。それにこの前のこととか学校に知れたらまずいんじゃないの?」
「こんなやり口フェアじゃありません。脅すつもりですか」
「まさか。仮定の話だよ。僕だって茜ちゃんに嫌われたくないしね。そうだな。空にたくさんの星があるだろ。星座だってたくさんさ。だからキスからはじまる恋愛ってのも映画みたいでありだって思わないかい? 違うな。茜ちゃんの場合はフェラチオからはじまる恋愛かな」
「なっっ! あれはっ」
「まあまあ。そんなに目くじらを立てなくてもいいだろ。せっかくの可愛い顔が台無しだよ。いまは強引だって思うかもしれないけど時間がたてばいい思い出だって思えるようになるかもしれないだろ。バカな思い出ほどいつまでも心に残るみたいにね。ほら、おしゃべりの時間はおしまいにしよう」

 唇を塞いで黙らせる。ねじ込んだ舌でツルンとした歯茎をなぞって、セーラー服の胸をモミモミと揉んだ。抵抗の声を上げようとした隙にさらに舌を奥までねじ込む。口を斜めに密着させて舌を喉元まで挿し込んで、そのまま口奥をねぶるようなディープキスをはじめた。車に、ンチュ……ううっ、ふあっ……チュルッ……と音をさせる。
「胸が青い果実みたいだね。下ろしたての石鹸の匂いがする。こうして車でキスをされるのも、もちろんはじめてだよね? あらためて経験って大切だって思うだろ」
「ンンンッ……ンアッ!……ああっ……」
「しゃべる余裕もないのかな。唇だけじゃなくて口の中もとても新鮮だよ」
「はうっ、んあっ、ぷはっ!! いやっ! はなしてっ!!」
「せっかちだな。もっと練習しないと。舌を動かしてみなよ。すぐに慣れると思うよ。ほら、僕の唾を飲んで。舌で転がしてからゆっくり味わって飲み込むんだ」
「いやっ! 練習じゃない、こんなのっ、はぅ、ほんとにいいです! んあっ……! むぅっ! うううっっ!! ……ンチュッ、ハムッ、レロレロ……んくっ、んくっ、うううううっ!!」
 腕の力で跳ね除けようとする茜が嫌悪に歪めた顔を横に逃がそうとすると、片手であごを固定されて舌を深く挿し込まれる。そのまま口奥をしゃぶられた。ピチャピチャ、ウネウネと口の中で動き回る。奥に逃がしていた舌を縛るように絡め取られ、歯と歯がガチリとぶつかって熱い呼吸が口で充満して交じり合った。
「もっと体の力を抜いて。一回大きく息を吸ってみなよ」
 舌の表面や裏側、さらに奥の付け根に喉元、頬の内側、歯茎などを舐めたり突付いたり転がしたりという何種類かのパターンで刺激しつつ、抵抗を続ける茜の表情や息づかいといった微妙な変化を至近距離で観察している。口の感じる場所を探るのと平行して、粘膜と粘膜との触れ合わせ粘液の交換し、まだどの色にも染まっていない茜の心に美樹本という異性の存在を確実にすり込ませているのだ。喉の一番奥を舐められた茜がアーチ状の眉をビクンと反応させた。そこを集中的に責める。細まったあご先が震え、空気の充満していたバスケットボールがしぼむように茜の体から抵抗する力が抜けていった。
「なるほどね。口の奥が一番感じるわけか」
「い、いや」
「なんだかマゾっぽいな、口の奥で感じるなんてさ。もっと舐めてあげるよ。ここが気持ちいいんだろ、やんちゃ姫の茜ちゃん」
 茜の弱点を見抜いて嬉しそうに言う。あごの間接を押さえて口を開かせ舌を挿し込んでネトネトに舐める。ヘビのように長い舌で喉元を舐められている感覚だ。抵抗の弱まった膝をたやすく開かせ性器を直接なでる。コシのあるちぢれ毛の感触があってその奥はビチョビチョに濡れていた。
「もう濡れてるじゃないか。嫌がってるわりにはキスだけで感じたのかな」
 指に恥毛を絡める。性器を指先で上下に翻弄すると、ピチャピチャという湿った音がした。
「ンンーー!! プハッ、やあーー!! はっ、はうっ、んんんっ!!」
 小鼻を膨らませて息つぎをする。助手席のシートから腰を浮かせてイヤイヤとくねらせた。膝を閉じようと思ってもうまく閉じられない。美樹本の指先が適確に茜の感じるポイントを刺激しているからだ。両膝の間ではパール色のショーツが布切れのように細くなって伸びていて、それを引き上げる余裕すらない。スカートが腰元までめくれていた。目じりに薄っすらと涙を浮かべ、茜はまた腰を派手にバウンドさせる。その反動で制服のスカートがヒラヒラと跳ねて、車のサスペンションが上下した。
「あんまり声を出してるとさ、だれかに気づかれるかもしれないよ。このへんは近所だろ。顔見知りの人とかいるんじゃないのかな」
 言葉巧みに抵抗を抑え込む。ムニュリとスリットを左右に開いて、その真ん中にデリケートに触れた。鮮やかなサーモンピンクの内側をなぞって包皮に覆われたクリトリスを指腹で転がし、唇にはドロドロとした唾液を流し込む。茜の鼻先を指で摘んだ。
「こうすると息が続かないだろ」
「うううーーー!! んんんーーーー!!」
 口に流し込まれた唾液をためて、茜は首を盛んに左右に振った。大きな瞳を悲しそうに濡らす。
「そんな驚くようなことじゃないよ。キスはテーブルマナーみたいなものだからね。しっかり勉強してないと」
「ふううっ! んんんうっ!」
「それにしても学校のみんなはビックリするだろうな。人気者の茜ちゃんがこうして学校帰りの車の中でキスの勉強してるなんてさ。とくに男子なんか暴動を起こすんじゃない。僕はすごく恨まれそうだ。どう? ここが気持ちいい? もう少し脚を開いてごらん。そうするともっと気持ち良くなれるよ。そう。それでいい。体はだんだん素直になってきたみたいだね。感度もいいみたいだ。さあ、唾を飲み込んでみて」
「ンクッ……。コクッ、ング。ぅぅ……ぅぅ……」
 茜は細い喉元を上下に動かして口の唾液を胃に流し込む。息が続かず仕方なく飲み下したのだ。口を開けて呼吸をし、本当に苦しかった。
「よく頑張ったね」
「うぁ……ぁぁ……」
「どうだった。はじめて飲んだ男の唾液は。お腹がふくれるだろ。慣れてくるとさ、そのうちたまらなくなると思うよ。普通のキスじゃ物足りないって感じるようになる。そうやって女の子は男の色に染められるからね」
 助手席のシートに身を埋めて胸を喘がせている茜の性器を指でグチュグチュと音を鳴らして刺激する。茜の表情は大人の官能に押し流されはじめた女子高生の顔に変わっていた。首筋に唇を押し当てる。ついばむようにキスをし、耳をネトネトと舐める。唇にまたもや唾液を流し込んだ。
「んあっ、んううっ、うあっ、んくっ、んくっ、んぐぐっ」
 抵抗しても無駄だという考えが頭に植えつけられ、茜は従順に喉を鳴らした。唇と唇から銀色の唾液の架け橋が糸となって伸びた。トロンと口を開けて、そこにまたもや美樹本の舌がネットリと挿し込まれる。経験豊富な指使いでアソコを触られながら虚ろになった瞳を潤ませて、頭の片隅で良美が教えてくれた美樹本のキスの話を思い出していた。実際に体験してみてわかった。頭が真っ白になるし、ぼうっとして気持ちいいし、スカートに手を入れられ、本当に下着を下ろされ、アソコは信じられないほどグッショリと濡れている。なにもかもが良美の言う通りだった。
「ステップアップしようか。まだ基本だからね」
「あうう、うあ、ふううっ……こ、こんなのいけない……」
「舌を出して。今度は茜ちゃんが舌を動かす番さ。いつまでも受け身のままじゃ進歩がないよ」
「ううう、そんなのできません」
「できるさ、茜ちゃんなら。もう体はこんなに大人なんだ。あとはもっとリラックスして、気持ちを僕のほうに向けるんだ。そうそう。いいよ、その感じだ。腰をもっと前に出してみてごらん。このカリキュラムをこなせばいまよりもっと魅力的な女の子になれる」

 まるで催眠術のような囁きだ。理性でダメだとわかっていても逆らうことができない。茜は言われた通りシートの腰を前へとずらし、舌先と舌先を折り重ねて触れ合わさせる。チロチロと動かして表面をすり合わせ、胸の鼓動がいままで以上に早まって、美樹本の指先は茜の閉じた膣口をほぐすようにその周囲を執拗に優しくなで回していた。浅く穿る。
「これぐらいなら怖くないよね。車だとスリルがあるだろ」
「はぁっ、うぁっ、ぅぅ」
「どう。オマンコ触られてみて。いけないことをされてるって思ってるのかな」
「こ、こんなのダメっ、やあんっ」
「胸がしこってきた。本当はさ、こんなふうにおっぱいとかオマンコを触られてみたいって思ってたんじゃないの、僕に。学校帰りにこんなことされるなんてさ、茜ちゃんも立派な女子高生だよね。子供だってバカにした学校の友達とかに見せてあげたいって思うだろ? みんなと同じでわたしも大学生の男の人に車の中でアソコを触られたりするぐらい大人なのよ、ってさ」
 セーラー服に手を忍ばせて胸をモミモミ揉む。ブラジャーをずらしてグイッと握り、乳首を指で挟んでクネクネと左右に倒す。「くうっ」と顔をしかめた茜が膝を小刻みに震わせている見ると、立派な毛並みごと性器全体をなでて、可憐な花びらを指先で軽くあやした。
「はぁっ、はぅぅ、そ、そこはだめぇ……やめてください」
 茜は額に苦渋の汗を滲ませ、力の抜けた指先で美樹本と腕をどうにか押さえようとする。視界が遠のいた気がした。
「すごく濡れてるよ、ここ」
「み、美樹本さんが触るからっ、はっ、恥ずかしい」
「ほら、シートまで垂れて汚してる。あとで拭くのが大変そうだな。ちょっと広げてみるね」
「あ、ダ、ダメっ。そこ、広げたりしないで……ああっ……」
 親指と人差し指でピラッと左右に開かせる。運転席から身を乗り出し、そこを覗き込んだ。
「うわ。思ってたより小さいな。陰毛はしっかりだけど、オマンコ自体は子供みたいだ。ピンク色ですごく小さいよ」
「み、見ないで、ああ、恥ずかしいっ……っっ」
 手で性器を隠そうとする。
「ダメだよ、隠したりしたら。おかしいところがないかちゃんと確認しないと」
 手をどけさせる。包皮に隠れているクリトリスをコリコリさせた。
「んあっ、んんああっ」
 腰を跳ね上げて助手席のシートでバウンドさせる、茜。拒んでいても拒みきれない。
「いいね、その表情。もっと色んな表情を見せてほしいな。僕だけが見ることのできる茜ちゃんの大人びた表情をさ」
「み、見せません。わたし、美樹本さんには見せたくないの」
「そんなつれないこと言わないでさ、僕の彼女になる話を考えてみてくれてもいいだろ。ここだけの話、あの日以来茜ちゃんのことを考えてばかりでね。いい歳して恋煩いなのかな。講義も耳に入らない始末でさ。逆に聞くけど茜ちゃんはそういうのなかった? 僕のことをふいに思い出してみたり、たとえば自分の部屋のベッドで僕にロストバージンのセックスされる姿を想像してみたりとかさ」
「そ、それは……」
 無人の美術館に飾られたブロンズ像のように表情が固まる。言葉につまった。良美に迫られた部室でのレズ体験を見透かされている思いがした。あのときたしかに美樹本に貫かれている自分の姿を茜は想像した。すべて良美のせいだといまさらながらに恨めしく思う。以前の自分であるならこんなふうに男性に体を触られて感じることなどありえなかったし、そういう状況になったとしても簡単に跳ねつけることができたはずだ。それがここのところの淫らな体験のせいで茜の体が感じやすくなり、めっきり抵抗する力が弱まっている。そもそも良美が紹介しなければ美樹本と知り合うことなどありもしなかった。
「あるんだ。想像したこと」
「あ、ありません」
「そんな必死になるとさ、かえってウソがバレバレだよ。そうか、あるのか。それは光栄だな、やんちゃ姫の茜ちゃんが僕とのロストバージンを想像してくれたなんてさ。すごく嬉しいよ」
「勝手に決めつけないでください。そんなこと想像したりしてません」
 強気に言ってみたものの茜はバツの悪さに顔を赤らめ窓側に向ける。そんな清純で初々しい恥じらいが、これまでにも茜のような女子高生を何十人も口説き落として処女を散らしてきたナンパな男子大学生の欲情をさらにかきたてるとも知らずに。指先で茜の膣口を先ほどまでより激しく混ぜくるように刺激する。ビチャビチャと濡れた音をさせて、指に愛液を絡める。完全に貞操観念の固い処女を責め落とすモードの指使いだ。
「んっ、ああっ、ダメっ。こんなのやめてっ」となまめかしく喘いだ、茜。美樹本はそのセーラー服をたくしあげ、プルルンとした乳房にしゃぶりついた。中指を垂直に押し立て、処女膜を傷つけないよう細心の注意で埋没させる。ンププッププ……という密閉された空間に空気が入り、茜の膣口に男の指が浅く挿入された。それをゆっくりと上下に抜き差しする。
「どう、茜ちゃん。僕の指が入ってるよ」
「いやあ。ああっ、怖いっ」
「心配はいらないよ。バージンは傷つけないからね」
「ああ、お願い。許してっ、わたし怖いっ。んんっ、はうっ」
 未知の恐怖に大粒の汗が浮かぶ。こんなに硬い物が自分の中に入るのはもちろんはじめての経験だ。良美の舌とは形も太さも違う。まぶたをきつく閉じて、唇に曲げた指を軽く噛んでおとなしくし、純潔を失いたくない願いに自然と脚を開く状態となる。ポニーテールとリボンが緊張に震えていた。
「やっぱりすごくキツイな。指1本でキツキツだよ。まるで硬い輪ゴムが指に何重にも巻きついてるみたいだ。トロトロだし、もしかしたらこいつは久々にとんでもない当たりかもしれないな。ここに僕のを入れたらすぐに射精しちゃいそうだ」
「うあっ、っっ……へ、ヘンなこと言わないでっ……く、ください……っ指、抜いて」
「ごめんごめん。つい、ね。こんなふうにされるのは初めて? 自分で触ったことはあるの?」
「くっ……うぁ、ぁぁっ……そんなこと……知らない」
「だれにも言わないからさ、僕だけ教えてくれないかな。この通りお願いだよ」
「あ、ありません……」
 羞恥心に視線を横に逸らした。いたたまれず手で性器を隠そうとする。
「なるほどね。指を入れたのは僕がはじめてってわけだ。そういうの教えてもらうとすごく興奮するな。ありがとうね、茜ちゃん。正直に言ってくれて」
「ああ……いや……こんなの。もうやめてっ」
「そんなにやめてほしいならさ、どうせだし僕のマンションに行くかい? さすがに車は狭いし人目も気になるしね。マンションならそのへんを気にせずにできるだろ」
「えっ……美樹本さんのマンション……?」
 茜は驚きに瞬きした。潤んだ視線を車内をさまよわせる。美樹本のマンションに行くということは、つまりそういうことなのだろう。異性との交際経験のない茜でもその言葉の意味ぐらいはわかる。
「……はい」と間を置いてから茜は静かに答えた。
「良かった。ようやく覚悟を決めてくれたわけだ。僕の彼女になってくれるってことだよね?」
 美樹本は確認の意味で茜の表情を覗き込む。押し黙った茜はうつむいて表情を隠していた。
「どうしたの。もう緊張してるのかな。着いたらシャワーを浴びるといいよ。そのほうが茜ちゃんも気持ちが落ち着くだろうし」
「そう…ですね……」
「シャンペンでも買って行こうか。不安にならなくていいよ、はじめてでも痛くないようにしてあげるよ」
 美樹本は急におとなしくなった茜の太腿を我が物顔で触った。そのまま性器に手を伸ばしても茜はフワリとした前髪で表情を隠したまま膝を開いて性器を黙って触られている。
「この体がもうすぐ僕だけの物になるわけだ。楽しみだな。少し飛ばすよ。シートベルトをしっかりしたほうがいい」
「……あの」
「ん?」
「このこと……良美にないしょにしてもらえますか」
 茜は腰を動かして両膝の間に伸びていたショーツをいそいそと引き上げてはき直す。スカートの裾を引っ張って下げて制服の乱れを直し、足下に落ちた学生鞄を拾った。
「良美ちゃん? ああ、もちろんさ。このことは僕と茜ちゃんの2人だけの秘密ってことだよね」
 爽やかに笑って美樹本がハンドルに手をかける。狭い道で引き返すために車をゆっくりとUターンさせようとさせた瞬間、茜は「ごめんなさい。わたしやっぱりそんな気になれません」と素早くシートベルトのロックを解除して勢い良く助手席側のドアを開けた。
 脱兎に飛び出す。慌てて引きとめようとする美樹本の腕を振り払い、車の入れない細い横道へ全力疾走で駆け出した。ポニーテールと黄色いリボンはまるで風のようにフロントガラスから消えた。

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