S ーエスー
作者:ブルー
公開
06. 駐車場で
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 日曜日の昼過ぎ、詩織の家の前に国産セダンが停まる。事務所の車だ。
 空はどんよりと曇っている。天気予報では夜にかけて雨が降り始めるといっていた。
 玄関から制服姿の詩織が出てきて、後部座席に乗り込む。さらさらのストレートヘア、普段と同じ黄色いヘアバンドをしていた。
(オーディションを受けるのにどうして制服なんだ?)
 俺は部屋の窓から見下ろしながら不思議に思った。
 車は市街地の方向へと走って行った。

 勉強机に座って、詩織の載っているアイドル雑誌を読んだ。
 公園での詩織の姿が引っかかる。
 やっぱり反対すれば良かったのだろうか? でも、それだと詩織のチャンスを潰してしまう気がする。
 結局のところ、トップアイドルへの階段を駆け上る詩織に引け目を感じて、意見する資格があるのか自信がなかった。
「いまさら考えてもしょうがないか」
 TVゲームをすることにした。
 好雄に借りていた恋愛シミュレーションゲームだ。
 個性的なヒロインがたくさん登場してヒットしている。とくにメインヒロインがお気に入りだ。
 ラスボスと言われるだけあって難易度が一番高くて、肝心なところでお邪魔キャラの横やりが入って一筋縄ではいかない。
「この娘、なんとなく詩織に似てるよな」
 運動のコマンドを実行して、主人公の体力をアップさせながら思った。
 学園のマドンナという設定といい、通常はそっけない態度なのにイベントになると思わせぶりなところとか瓜二つだ。
 ゲームマニアの間でも一番人気がある。

「もうこんな時間か」
 気が付いたら窓は夕暮れ色に染まっていた。
 ラストの卒業まで進めたが最後の告白イベントで失敗した。約束の場所にメインヒロインがあらわれなかった。
「どこかで選択肢をミスったのか。詩織はまだ帰ってないのか?」
 窓の向こう側を見る。
 詩織の部屋に人の気配はない。
 夕方前には帰るといっていたのに、すでに6時を過ぎている。
 さすがに心配になってきた。映画のオーディションにしても帰りが遅い。
 俺は詩織の家に電話した。
 呼び出し音がなって詩織の母親が電話に出た。
「もしもし、俺です」
「あら、公人ちゃん」
「詩織はまだ帰ってないんですか?」
「それが事務所から電話があって、予定が伸びて帰りが遅くなるって」
「遅くって何時ぐらい?」
「さあ……帰りは車で送るから心配ないとしか」
「あの、詩織は出かける時になにか言ってませんでした?」
「今日はとても大事な仕事があるとしか。それがどうかしたの?」
 妙な胸騒ぎがした。
 電話を切ると、いてもたっても居られずに家を飛び出した。
 自転車を飛ばしてきらめきグランドホテルへと向かう。


 到着した頃には、街のネオンが灯り、行き交う車のヘッドライトが道路を照らしていた。
 見上げるような高層ビルには、いくつもの四角い灯りがついている。まるで巨大な光のモニュメントのようだ。
 ロータリーには黒塗りのリムジンに客待ちのタクシーが何台も停まっている。大きな大理石の柱と間接照明に照らされた正面入り口は、西洋風建築のデザインを残しつつ、無駄に華美な部分を取り払ったスマートな雰囲気がある。白い手袋をしたドアマンが2人立っていた。
 正面玄関に入る。
 ロビーは落ち着いた雰囲気で広々としていて、床は大理石で天井にはアンティーク調のシャンデリアが飾られている。革張りのソファーには資産家風の客がまばらにいる。かすかにピアノの調べが聞こえる。大きなガラス窓からはライトアップされた日本庭園が見える。昼なら池で泳ぐたくさんの錦鯉を見れただろう。
 左手に空港カウンターのようなフロントがある。スタッフが3人いる。
「すみません。春本っていう客がいるはずなんですけど、部屋を教えてください」
「失礼ですが、お客様はお知り合いの方でしょうか」
「ちがうけど、緊急の用件があるんです」
「大変申し訳ございませんが、当ホテルのご利用の方についてお教えすることはできません」
「そういわずに。知り合いがそいつといるはずなんです」
 フロント係の男はいぶかしむように俺の顔を見る。
 横のパソコンのキーボードを叩いた。
「ご宿泊者の中に春本さまというお名前はございません」
「ウソだ。ちゃんと調べたのか。ここでオーディションがあるって詩織は間違いなく言ってたぞ」
「お客様。あまり大きな声を出されては困ります。おいっ」
 振り向くとドアマンが立っていた。
「はなせっ、俺は詩織を探しているだけなのに!」
 必死で説明をしたがまともに取り合ってもらえない。
 俺はホテルからつまみ出された。
「くそっ……」
 再び入ろうにも、正面玄関ではドアマンが目を光らせている。

 俺はあきらめきれずにホテルの裏側へと回った。
 忍び込める入り口はないかと探していると、駐車場にずらりと並んだ高級車の中に見覚えのある車が停まっているのを見つけた。
 真っ白なベントレーだ。うろ覚えだがナンバーも一致している。
 あいつがこのホテルにいる証拠だ。
 ホテルと駐車場を繋ぐ出入口には警備員が常駐していた。
 出てくるとしたら、そこの気がした。
 駐車場すぐ横の街灯の下で待つことにした。
 ここなら人の出入りがよく見えるし、もし春本の車が動いてもすぐにわかる。
 通用口を通る客はめったにいない。
 夜空には厚い雲が広がって星一つ見えなかった。いまにも雨が降りだしそうだ。
 客が出てくるたびに人相を確認した。
 1時間たっても2時間たっても、春本があらわれる気配は一向になかった。
 やたら時間が長く感じられる。
(なにをやってるんだ。ただのオーディションにしては時間がかかりすぎだろ)
 晩飯を抜いているせいで腹が大きな音を立てる。
 もしかすると俺の考えすぎで、詩織は入れ違いで家に帰っている可能性もある。


 あきらめて帰ろうかと考えはじめた矢先、通用口から運動不足の体を揺らしながらスーツ姿の春本が出て来た。黒縁のメガネにハゲ上がった頭。ネクタイはしていない。普段からこういうホテルを利用し慣れているといった様子だ。
 その隣には制服姿の詩織がいる。
 春本は右腕を詩織の肩に回している。遠目にもあやしい雰囲気を醸し出している。
 車に乗り込もうとする二人に俺は急いで駆け寄った。
「詩織っ!!」
 突然、暗闇から現れた俺を見て、詩織はハッと驚いた顔をした。
「公人、どうしてここに」
「オーディションは終わったのか? 詩織の帰りが遅いから心配になってさ」
「え、ええ……」
 アニメのヒロインのような詩織の表情がサッと曇る。いつもはきらきらと輝く愛くるしい瞳が沈んだ。
 なにか距離を感じる。
 近づいてわかったが、詩織の髪が水気を含んで濡れている。
「どうした? 体調が悪いのか、詩織?」
「ううん……ちがうの……」
「今日の仕事は終わりだろ。俺と一緒に帰ろう」
「えっと……春本さんが車で……」
「そいつに送ってもらう必要はないだろ」
「……」
 それっきり詩織は黙ってしまった。
 うつむき加減に両手を体の前で重ねて彫像みたいに固まっている。俺の声も聞こえていないみたいだ。
「誰かと思えば。芸能ゴシップの記者かと思ってびっくりしたぞ」
 かわりに春本が答える。メガネの奥のキツネのような目で俺を見ている。
 あいかわらず詩織の細い肩を抱いている。それが余計に俺をイラつかせる。
「部外者は黙ってろよ」
「あいかわらず口の利き方を知らない奴だな」
「うるせーよ。プロデューサーだかディレクターだか知らないが、夜遅くまで未成年を連れ回して許されると思ってるのか」
 春本はムッとするかと思ったが、肉付きの良い頬を緩ませてずっと上機嫌だ。
 むしろ俺を鼻で笑って見下して、勝ち誇っている余裕すら感じる。
(あれれ、なんだこの余裕っぷりは)
 意外な反応に面食らった。
 それに前回よりも詩織に対してなれなれしい。
「幼なじみがナイト気取りか」
「悪いのかよ。黙ってその腕をどけろよ」
「グフフ……だが、助けに来るのがすこし遅かったな」
「どういう意味だ」
「勘の鈍い男だ。この状況を見てまだ察しないのか」
「はあ?」
「詩織ちゃんも生身の女。つまりこういうことだ」
 春本は回した腕の手で、詩織の制服の胸をグイッと掴む。
 見せつけるようにモミモミと揉んだ。
「なっ!?!?」
 目を疑った。
 揉むというより鷲掴みにして力強く絞るという表現が近い。
「詩織ちゃんの肉体をすみずみまで楽しませてもらったよ。大事な処女マンコに何発もハメてね」
 制服の上から乳首の場所を指でつまんで思い切り捩じる。
「っっ……」
 詩織が唇を噛みしめる。
 俺の知っている詩織なら間違いなく怒るはずだ。相手を突き飛ばして、軽蔑のまなざしで見つめるだろう。
 嫌がる素振りを見せるどころか、春本のスケベ行為に対して視線を落としてじっと耐えている。
 おそらく制服の下はノーブラだ。乳首の形がぷっくりと浮いている。
(どうしてだ?? どうして詩織は怒らない??)
 疑問と混乱が交錯する。
 タチの悪い夢でも見せられてる気分だ。
「ウソをつきやがれ。汚い手で詩織に触れるな!」
 春本をにらみつける。
 殴らなかったのは詩織の前だからだ。
「怖い怖い」
 春本は薄ら笑いを浮かべて、なおも詩織の乳首をいじくっている。
 今度は制服の内側に手を忍ばせて直接揉みしだきだした。
「詩織ちゃんのおっぱいはな、小ぶりだが弾力があって手に吸い付くよう柔らかいぞ。感度も抜群だ。こうやってちょっといじっただけですぐに乳首を尖らせる」
「こいつっ!」
「威勢はいいが、ここで騒ぎを起こすつもりか」
「知るか。ギタンギタンのボコボコにしてやる!」
「警察沙汰になって一番困るのは誰だかな。ゴシップ誌がすぐに嗅ぎつけてくるぞ。ハイエナみたいな奴らだからな」
 ホテルの警備員が様子をうかがうようにこちらを見ていた。
 なにかあればすぐに駆けつけてきそうな雰囲気だ。
 警察沙汰になればマスコミ関係者も知るだろう。もしスキャンダルの記事が出回ったりすれば、清純派アイドルである詩織はイメージは完全に崩壊してしまう。
 芸能界は引退、放送中のCM違約金で莫大な借金を作ることもありえる。
「どうして怒らないんだよ、詩織」
「……」
「こいつの話は全部ウソだよな? 詩織はオーディションを受けてただけだろ? なにか弱味でも握られてるのか?」
 詩織はうつむいたままだ。
 握りしめた指先がかすかに震えている。
「ごめんなさい」
 しぼり出すような小さな声だ。
「ちゃんと俺の目を見ろよ」
 詩織の正面に立って食い下がった。
「邪魔だ。そこをどいてもらえるかな」
 俺を押しのけるように春本が割って入る。
 助手席のドアを開けて、詩織を座らせる。
 ドアをバタンと閉めた。
 俺は窓を叩いて詩織を呼んだ。
 助手席のガラス越しの詩織は、まっすぐ前を向いたまま人形みたいに生気のない顔色をしている。
 春本が後ろから俺の肩を掴んだ。
「詩織ちゃんの態度が答えだ」
「うるさい。詩織になにをした!」
「あきらめの悪い奴だな。さっき言っただろ」
「詩織にかぎって、そんなことあるわけない」
「グフフ……そこまでいうなら全部教えてやろう」
 メガネの奥で春本のキツネ目が不気味に笑う。
 まるで俺の反応を楽しんでいるかのようだ。
「これは彼女もすべて納得した上での取引だ。枕営業という言葉ぐらい聞いたことがあるだろ。新人アイドルが売れるためにお偉方と一夜を共にする。今日は私に処女を捧げる覚悟をして来たわけだ。
 私の指示で制服姿のままスカートをたくしあげさせて、頬を恥じらいに染めて。生まれて初めて男に抱かれる覚悟を決めた彼女の姿。さすが映画のヒロインとして私が目を付けただけはある。
 フェラは思いのほか積極的だったよ。私が教えなくてもほとんどパーフェクトのおしゃぶりをしてくれた。もしかするとこれまでにも、撮影のスタッフ相手に隠れてこっそり口でしていたのかもしれないな。この業界は手の早い奴だらけだ。とくに若いアイドルに目がない。ククッ……私が言うのもあれだがね。
 そのあとでクンニと電マを駆使してショーツが透けるぐらいビチョビチョに濡らして焦らして。ベッドで制服姿のまま一発ハメてやったら、あられもない表情でヒイヒイヨガっていたよ。
 どうやら生まれつきセックスの才能もあるらしい。信じられないだろ? 虫も殺さないような清純派アイドルの彼女がマンコを大人チンポで突かれただけで淫らな雌顔をするんだからな。だが、それこそがリアルの藤崎詩織だ。人気アイドルの仮面を剥いだ、本物の。
 私もひさしぶりにハッスルしたよ。詩織ちゃんみたいな若くてまだ汚れてないアイドルを、仕事を餌に抱くのはたまらない。私のライフワークのようなものだ。
 彼女にしてもどこの馬の骨ともわからないような男に抱かれて一生に一度きりの処女を失うより、金持ちで人脈のある大人に抱かれたほうがよっぽど値打ちが上がる。
 一発目は正常位で、二発目はバック。痛がっていたのははじめだけだ。彼女のアソコはキツキツでねっとりと絡みついて、まさに最高級の肉オナホだ。ついさっきまで全裸になった詩織ちゃんが私の上にまたがって、アソコが気持ちいい気持ちいいーって喘ぎながら、長い髪を振り乱して自分で腰を動かしてくれた。まるで盛りのついた女子高生みたいにね。おかげでこんなに帰りが遅くなったわけだ」
 春本はニヤニヤとしている。
 俺は膝が震えて頭が真っ白になった。
 信じられないが、詩織の様子を考えるとつじつまがあう。
 春本がプラスチックケースに入った無地のDVDを取り出した。
 DVDにはマジックで『S』とだけイニシャルが書かれていた。
「ウソだと思うなら、家に帰ってそいつを見ればいい。撮れたてのほやほや。編集してないが、私のコレクションの中でも最高傑作だ」
 俺は言葉が出なかった。なにを言い返せばいいのかわからない。
 助手席の詩織をチラリと見た。
 詩織は悲しそうな顔でうつむいて、こっちを見ようとすらしない。
 春本が俺の肩を軽く叩いた。
 耳元で「一番の見どころは、中出しを決めた瞬間に詩織ちゃんが私の背中に思いっきり爪を立てて、顔をしかめた場面だ。あの顔は完全に子宮で感じていたぞ。せいぜい大事な幼なじみが慰み者にされる動画でコキまくってくれ」と囁いた
 春本が運転席に乗り込む。
 詩織を載せた真っ白なベントレーが、ゆっくりとホテルの駐車場を出ていた。
 DVDのケースにポツポツと水滴が落ちる。
 いつのまにか雨が降り始めていた。
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